その距離わずか、3cm

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「何もしてねぇわ」

『ええ…せっかく一緒に帰れたのに家あがらなかったの？』


泊めてもらえばよかったのにとケラケラ笑う彼はもう酔いは覚めたっぽい。


「あがるわけねぇだろバカかお前」

『俺はあがったことあるよ』

「…だからなんだよ」

『うはっ！しょーたが怒った！』


電話の向こうでニヤニヤしながら俺の反応を楽しんでると思ったら悔しくてたまらない。


「お前と友達やめる」

『そんなこと言うなって。悪かった』


特に悪びれた様子もなくそう言うから電話を切ってやろうとした時ふっかではない声が電話越しに聞こえた。


「誰かと一緒にいんの？」

『あー、俺、佐久間ん家いんの』

「佐久間？」

『俺が気になってた漫画全巻持ってるっつーからさぁ、明日休みだし読み倒してやろうと思って』

「大迷惑じゃん」

『佐久間も明日休みだから大丈夫って言われたもーん。な、佐久間』

『んあ？なに？』

『聞いとけってぇ』

『もぉふっか近い！離れてっ！』

『佐久間が俺の話聞かないからだろ』

「…」


俺は一体何を聞かされているのだろうか。


「用事ないなら、切るぞ」

『あー待って待って！』

「…なんだよ」

『Aちゃんの家に上がったのは引越しのお手伝いしただけで美紅も照もいたから心配しなさんな』

「…あっそ」


ムカついたからそう言って切ってやった。

明日ふっかが休みってことはAも休みか。


「…帰るか」


やっと少しだけ帰る気になってタクシーに乗るために大通りまでゆっくりと歩き出した。

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