サッカー部の目黒くん

3 ページ3

＿


そんな私に突然訪れる転機。

その日はバイトが休みでいつものように目黒くんを眺めようと教室に1人残っていると現れた担任の先生。


「あら、Aさん。いいところに」


ニマニマして私を手招きするからチラリと横目でグラウンドを見て先生のもとへ。

まだ目黒くんいないみたいだし、いっか。


「これ理科室に持ってってくれない?」

「…」


職員室の前に着くと長テーブルに置かれているプリントと冊子たち。


「準備室の中のテーブルにポーンって置いてていいから」


先生は、よろしく〜と鍵を渡して職員室に入ってしまった。

目黒くん見たかったのに。

これじゃ2往復はしなきゃだな。


「はぁ…」


ため息をひとつついてプリントを持ち上げた。

角を曲がろうとしたその時、誰かにぶつかりそうになった。


「あっ、ぶなかっ、たぁ」

反射で1歩下がったからプリントは散らばらず私の腕の中にしっかりある。


「ごめん!大丈夫?」


目黒くんだ…!

「…おーい?」

「あ!うん、平気っ!」


まさか、また話せるなんて思わなかった。

目黒くんは私の手元をチラッと見る。


「どこ行くの?」

「理科室。先生に持ってってほしいってお願いされたの」

「あれも?」


目黒くんは職員室前の長テーブルに置いてある冊子を指さす。


「あれも」


目黒くんは長テーブルから冊子を持ち上げた。


「えええ、大丈夫だよ!?」

「往復するより1回で終わらせた方がいいでしょ?」

「でも…」

「行こ」

「え、あ、ありがと」

「いーえ」


こうして2人で並んで理科室に行くことになってしまった。

4→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す