サッカー部の目黒くん

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家に帰った途端お母さんにまじまじと顔を見られて何か聞かれる前に部屋に直行する。

そして扉にもたれてズルズルと座り込んだ。

私、目黒くんと付き合うことになったんだ。


「キス…しちゃっ、た」


さっきまで触れていたかのように唇に残る感触。

ドキドキと速まる心臓はしばらく収まることはなかった。


その日の夜、目黒くんから電話が来てドキドキしながら通話ボタンをタップする。

話していてふと思う。

…私、目黒くんのことあんまり知らない。

誕生日は?血液型は?好きなアーティストとか…。


「…Aさん?」

「ん?あ、ごめんっ!」

「どうかした?」

「ちょっとボーッとしちゃっただけ」

「えー、気になる。…俺と電話してんのに、何考えてたの?」

「いやぁ、その…」

「うん」

「私、目黒くんの…か、彼女?になったけど、目黒くんのことあまり知らないなぁ、って」


相づちの声が優しくてぽろりと零した本音。


「ふはっ!彼女?ってなんで疑問形なの」

「…あぁ、いや、えっと」

「それは俺だって一緒。Aさんのこと、知らないことの方が多い。でもさ、それは今から少しずつ知ってけばいいじゃん。楽しくない?いろいろ発見できてさ」

「…うん。そうだね」


目黒くんはすごいな。

相手を知らないことを前向きに考えてる。

私も目黒くんみたいに前向きになりたいな。


「明日も学校だしそろそろ寝よっか」

「うん。そうしよ」

「んじゃー、また明日ね」

「また」

「おやすみ。…A、大好き」

「…っ。おやす、み」

「…それだけ?」

「…私も、大好き」

満足そうに電話を切る目黒くん。

ベッドにダイブして枕に顔を埋めた。


「…名前で呼んだ、よね?」


ドキドキしてあまり眠れず次の日は寝不足のまま学校に行くことになってしまった。

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