近すぎて言えない。

２３：Side 赤 ページ23

　
　
　
　
　
　
　翔太のミステリーツアー当日。
　
　駅で待ち合わせて電車に乗る。
　降りてからしばらく歩き続ける。
　移動中も今も会話はぽつりぽつりだ。
　
　別にそれはいつものこと。

　ただ翔太がそわそわしてるから、俺までなんか落ち着かない。

　あと、どこに行くかも翔太は一切教えてくれないけど、

　ごめん。
　わりとすぐに分かっちゃったんだよねぇ。

「おぉー懐かしい！」

　連れてこられた場所は、小さい頃よく遊んでいた公園だった。
　ブランコとか滑り台があるごく普通の公園。

　あのトンネルの中でよく鬼ごっこしたっけな。

「ここでよく鬼ごっことかしましたわ」
　翔太も懐かしそうにあたりを見回してる。

　確かに最後の公園散歩はここだね。
　後で実家寄ろうかな。

「あ、ちょっと待ってて」

　思い出した。このトンネルに、俺何かラクガキした気がする。
　トンネルの高さは子供の身長くらい。
　大人は少し身をかがめて入るしかない。

「何？どうしたの」

　翔太が後を追ってきた。
「俺、この辺りにラクガキしたと思うんだよね」
　もう消されたかなぁ。

「あ」

　あった。かすれてぱっと見じゃ分からないけど。

「あった？」
「うん。ここ」
「何描いたの？」
「サッカーしてる俺達」
「ふぅははは！」
「これボールでぇ、確か翔太これ」
　トンネルの中に翔太の爆笑が響く。

　確かその日、俺と翔太と何人かでサッカーして、メチャメチャ盛り上がったんだった。

「忘れたくなくて」
　だからこっそり描いたんだけど、今まで忘れてたなぁ。

「翔太連れてきてくれたから、思い出した」

「くふふ……ぅおぉ……」
　何か食らったのかな。

　
　あ。
　
　
「いつも翔太は、俺の大切な忘れ物を届けてくれるね」
　
　
　キメてみた。

　
　…………
　
　
　あれ？

　すべった？

　翔太うつむいたまま膝抱えちゃった。
　反応に困ったのかな。

　翔太やさしいから、それに悩んでるのかも。
　
　
「……なんか……すいません」
　
　
　そろそろ行こう、と立ち上がろうとすると、翔太に腕を掴まれた。
　そのまま“座って”っていうように力を込めてきたから、また座り直した。
　
　
　……この雰囲気……
　
　
　ちょっと怖いな。

　お前の気持ち多分知ってるけど、

　それ、どうするの？
　
　
　俺の気持ちは、どうなるの。
　
　
　

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