近すぎて言えない。

１２：Side 青 ページ12

　
　
　
　
　
　
　
「……じゃあ食う」
「ふへへ」
　可笑しそうに、ようやく涼太が笑った。俺もさっきから口元緩みっぱなしだ。
　箱の中はチョコとクッキーが入ってた。いかにもオシャレな感じで、たぶんどこか有名店のだ。
　
「うわっ、うま」
「うまい」
　正面から涼太と目が合った。“うまいな”と表情で会話する。
　
　涼太が目を細めて笑ってる。俺も笑っちゃってる。
　大の男がお菓子食って、顔見合わせて笑ってるって、ヤバない？
　ヤバいよね。そんで俺、ちょっと満たされていくのを感じてんの。
　だって目の前の涼太がめっちゃ良い。
　
　切れ長の目が細くなってる。
　涼太の右頬がわずかにふくらんでる。チョコそこにあるんだ。
　肉厚な赤い唇が上下に動いて、
　そこから舌がチロと唇を舐めた。
　
「！！」
　
　ヤバ――！
　
　
　バチン！
　
　
「……何すんの……」
　
　気付いたら俺、涼太の両頬を両手ビンタしてた。そんでそのまま、両手に力を入れて変顔にしてた。
　いや、ビンタするつもりは無かったんだけど、急いでた。
　めっちゃ、めっちゃ……もうなんか、もう……あの、ヤバいわ。
　
　涼太の唇に、すげぇ触りたくなった。
　
　……ヤバい事したくなって、するところだった。
　
　
　
　
　
　
　

１３：Side 青→←１１：Side 青

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す