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意思疎通 ページ3

虎杖悠仁は、ふと違和感を感じた。抱きしめていたはずのA身体が随分と重く感じるのだ。全身を自分に預けて、片手は力なく垂れ下がっている。背中を握る右手は、今にも取れてしまいそうな程力がない。


「A?……A、A。なぁ、Aってば。寝てんのか?起きろよ、まだ、まだ俺言ってないから。お前への返事してないから。俺も好きだよ、大好きだよ。お前が笑ってるなら、俺は本当になんでも出来るんだよ」


喉が閉まって言葉に詰まる。震える手でAの背中をさすって、それから抱き締めた。まだ、暖かい。甘い香りも綺麗な髪も瞼に触れれば美しい瞳もある。けれど、鼓動だけがない。Aの魂だけが、どこにもない。


「A。A………」


とうとう自力では立てなくなって、Aを抱えたまま膝をついた。愛してる、なんて言葉じゃ足りないくらいお前を愛してるのに。……どうしてお前はさよならの一つも言わせてくれないんだよ。まだ、Aが見てない世界だってどこへだって、手を繋いで連れて行ってやりたいのに。こんなんじゃどこにも行けない。


「___?。すく、な?」


心臓が、軽い。自分の中でとぐろを巻いていた憎悪を感じない。何度呼びかけても返事の一つも返ってこない。脳内に響く声も、なにも。


_____ない。


「オエ」


理解した。Aが何をしようとしたのか何をしたのか。


「………Aってホント、俺が大好きだよな」


わざわざ俺の腕の中から行くって、悪趣味にもほどが……うん、お前は両面宿儺の妻だもんな。……そっか。


目を閉じた。迫り上がる涙も嗚咽も吐き気さえ止めどなく俺を責め立てる。


『悠仁は、いなくならない?』


ハ、目を開けた。一筋涙が頬をつたって、それから震える喉で息を吐いた。……俺はあの時、言葉を返さなかったけ。


「……A、ずっとそばにいるよ。俺が忘れなきゃ、いいんだ。忘れない、忘れないよ。お前がくれた物も言葉も愛も、死んだって離したりしない」


___だから、また逢えたらよろしく頼むな。











「行かなきゃ」


俺はまだ、戦わないとダメなんだから。

来来世、今世→←世界で二人きりの愛



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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美園(プロフ) - 夢主の愛の重み…宿儺の執着…虎杖との親愛…母親との親子愛…全て含めて愛の物語だと思いました。最後の結末最高でした。最高の作品をありがとうございます。これからも愛読します。 (4月21日 9時) (レス) @page4 id: de4d34654c (このIDを非表示/違反報告)
かな - とても素敵な作品をありがとうございます最後はしんみりしちゃいました…(つД`)ノ・。゚・.。 (3月25日 16時) (レス) @page4 id: 76d6cb1d64 (このIDを非表示/違反報告)
麗葉 - お二人の愛とても素晴らしいですね!空想の中の恋というより本当に昔あったみたいな(?)恋でした!素敵な作品ありがとうございました! (6月21日 23時) (レス) @page4 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
-  ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年4月20日 20時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
シャケ(プロフ) - 更新されてるの見た瞬間テンション爆上がりしちゃいました!!!ありがとうございます!!!(´TωT`) (2022年5月6日 14時) (レス) id: 01786eacc2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年1月24日 19時

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