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世界で二人きりの愛 ページ2

生得領域とは心の中と言い換えられるらしい。その人の性質を顕著に表す空間は、私の場合前世の我が家になっていた。あの頃とそのままの風景に、戻ってきたのかと錯覚するほど。そんなワケないのだけれど。


我が家の真正面、目の前に広がる高専の校舎に、そっとため息を吐いた。五条があの日言ったように、私は変わってしまった。旦那様しか心に住まわせない私は青目に殺されて。悠仁に生かされたから、私はこんなにも大切な人が出来た。


「悠仁、怒るだろうなぁ」
「ここに来てまで他の男の名を呼ぶか」
「……旦那様」


ふと気づけば旦那様が隣に並んでいた。私が愛した旦那様の姿で、貴方は私の手を握った。この空間は、私と旦那様の二人きりだ。どこまで遠くへ行こうと、人っ子一人いない。正しく、私が望んだ楽園だった。


「………怒ってますか?」
「お前が………Aが望むなら叶えてやるまでだ。ここにいつまでも二人きりである事も、悪くは無い」
「何も言わないんですね。高専のこと」
「Aが最後に選んだのは俺だろう。それだけで十分だ」


ばか。喉に嗚咽が込み上げて弱々しいまま音に出た。私、貴方を殺すんですよ。誰よりも貴方の生を願って縛り付けたくせに、私が貴方を消し去るんですよ。今なら抵抗だって罵倒だって受け止めますよ。逃げたって許してあげます。


「俺がお前を選んで、お前が俺を選んだ。それ以上の事実が必要か?俺はずっとお前と生きたかったし、死にたかった。お前のいない千年は酷く滑稽でつまらなくて……寂しかったよ」


ギュッと抱きしめて、貴方は私に囁いた。少し低い体温は、いつまでもあの頃のまま。ゆっくり時を刻む心音もいつまでも変わりはしない。千年の時を、私を想って過ごしてくれた。ああ、なんて愛おしい。


「……もし来世があるなら、何がしたいですか?」
「…………お前の料理は美味かった。俺はまだあれ以上の美味さに出会ったことはない。だから、夫婦で定食屋でも開くか」


一緒に年老いて死んでいくのも悪くは無い。


てっきりお前と一緒ならなんでもいい、なんて返されると思っていたから驚いた。……それと同時に心が弾む。この方の中で私は、絶対に隣にいる存在なのだと。当たり前なのだと、示してくれた。それだけで、こんなにも満たされる。


「愛しています。ずっとずっと、私は貴方を離したりなんてしませんからね」
「望むことろだ」


キスを一つ。伝わる体温で溶けだして、やっと一つになれた気がした。

意思疎通→←愛のカタチ



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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美園(プロフ) - 夢主の愛の重み…宿儺の執着…虎杖との親愛…母親との親子愛…全て含めて愛の物語だと思いました。最後の結末最高でした。最高の作品をありがとうございます。これからも愛読します。 (4月21日 9時) (レス) @page4 id: de4d34654c (このIDを非表示/違反報告)
かな - とても素敵な作品をありがとうございます最後はしんみりしちゃいました…(つД`)ノ・。゚・.。 (3月25日 16時) (レス) @page4 id: 76d6cb1d64 (このIDを非表示/違反報告)
麗葉 - お二人の愛とても素晴らしいですね!空想の中の恋というより本当に昔あったみたいな(?)恋でした!素敵な作品ありがとうございました! (6月21日 23時) (レス) @page4 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
-  ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年4月20日 20時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
シャケ(プロフ) - 更新されてるの見た瞬間テンション爆上がりしちゃいました!!!ありがとうございます!!!(´TωT`) (2022年5月6日 14時) (レス) id: 01786eacc2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2022年1月24日 19時

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