愛のカタチ ページ1
｢………俺は、俺を許せない｣
ポツリ、悠仁が呟いた。周囲には私達しかいないここでは、悠仁の声はよく通った。
｢自分だけ助かった。俺だけ、死んでない｣
俺は行かなきゃいけない。このままじゃ俺は、ただの人殺しだ。
ハッと悠仁の目を見た。鉛を溶かした様な真っ黒の瞳には、計り知れないほどの絶望がとぐろを巻いている。見上げることにより少し空いてしまった空間を埋めるように、悠仁はもう一度私を強く抱き締めた。ピッタリ体どうしがくっついて、骨はミシリと音を立てた。
｢………俺のせいで人が死んだ。それでAまで死んだら、俺も生きていけないんだよ｣
あ、喉から絞り出されたのはそんな音だった。私には悠仁以外の家族はいないけど、それは悠仁も同じことに気づいた。悠仁にも、もう私しか残っていない。それを嬉しいと感じている自分がいることも気づいた。
体を締め付ける腕がどうしようもなく愛おしくて、私も返すように強めた。もっと、もっと抱きしめて、悠仁の痕を残して。貴方の執着を頂戴。私が貴方を忘れられないくらい、色あせてしまわないくらい、満たして。ごめんねって、何度でも謝る。我儘でごめんね、悲しませてごめんね。いつまでも自分本位で、身勝手でごめんね。
｢悠仁｣
｢……A｣
｢私ね、悠仁が大好きだよ。ずっとずっと、いつまでも大好き。忘れない、貴方がくれた愛をいつまでも、忘れないから｣
｢A？｣
悠仁の体が強ばる。怯えたように私を瞳に映して、汗が額を流れた。
｢だからまた逢えたら。また私の手を引いて、色んなとこ連れてってね｣
｢A！！｣
傷ひとつない悠仁の首に吸い付く。赤い痕を残して、私は笑った。
｢私は身勝手だから、悠仁の気持ちなんて一つも考えないよ。貴方が愛した家族は両面宿儺の妻なんだから、諦めてね。｣
旦那様、小さく呟いた。悠仁の頬に浮かんだ旦那様は、何も言わずに私を見つめる。ああ、ああ！私、貴方とこうなる為に生まれ変わったのかも知れません。いつまでも二人で、寄り添いましょうね。
｢愛してます｣
その唇に吸い付くと、酷く甘い味がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1737人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美園(プロフ) - 夢主の愛の重み…宿儺の執着…虎杖との親愛…母親との親子愛…全て含めて愛の物語だと思いました。最後の結末最高でした。最高の作品をありがとうございます。これからも愛読します。 (4月21日 9時) (
レス) @page4 id: de4d34654c (このIDを非表示/違反報告)
かな - とても素敵な作品をありがとうございます最後はしんみりしちゃいました…(つД`)ノ・｡ﾟ・．。 (3月25日 16時) (レス) @page4 id: 76d6cb1d64 (このIDを非表示/違反報告)
麗葉 - お二人の愛とても素晴らしいですね！空想の中の恋というより本当に昔あったみたいな(？)恋でした！素敵な作品ありがとうございました！ (6月21日 23時) (レス) @page4 id: 14fd5e9416 (このIDを非表示/違反報告)
箱 - ステキな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年4月20日 20時) (レス) id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
シャケ(プロフ) - 更新されてるの見た瞬間テンション爆上がりしちゃいました！！！ありがとうございます！！！(´TωT｀) (2022年5月6日 14時) (レス) id: 01786eacc2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きなこもち | 作成日時：2022年1月24日 19時
