前世は両面宿儺の妻だった。２【呪術廻戦】

体温を感じて ページ8

今日も今日とて修行。


パンダ先輩に投げられて、受け身をとる。当初より上手くなったと褒められた。嬉しくてふわふわの毛なみに抱きつく。スー、太陽の匂い。


「おい、そんなもん嗅ぐな」
「真希先輩。お疲れ様です」


飲み物を持ってきてくれたらしい。ありがたく受け取るって口を付けた。汗をかいた体にスポーツ飲料が染み渡る。


「休憩だ。木陰にでも入って休め」


ポン、真希さんが自分の隣を叩く。おお、イケメンだ。美人は何をやっても絵になるな。せっかく誘われたので、隣に座った。悠仁も今頃五条に修行をつけてもらっているのだろうか。もうすぐで交流会、会える日までもう少しだ。


ジー、真希さんの視線が刺さる。すごく見られている。特に、顔。何か付いているだろうか。


「あの、何か…」
「……ああ、悪い。じっと見て」
「それは別に構いませんけど、何か付いてたりします？」
「いや、見れば見るほど紗南さんの面影があるなと思って」
「そうですかね……？」


母の顔を思い出す。どっちかっていうとあんまり似ていない気がするが、真希先輩には似てるように見えるのか。母の顔をあまり鮮明には覚えていないから、似ていると言われてもピンとこない。


今の私の顔は前世とあまり変わらない。もしかしたら前世の母は今世でも私の母なのだろうか。前世の母を見た事がないからなんとも言えない。美しい人とだけ、世話係が教えてくれた。それ以外、前世の母のことは知らない。知ろうともしなかった。


「母さんと仲が良かったんですか？」
「まあな。昔から、よく面倒を見てもらってたんだ」
「へー」


自分で聞いておいてだが、あんまり興味が湧かない。


「……どうでもよさそうだな」
「すみません。思ったより興味が湧かなくて」
「興味って……母親だろ？」
「母って言ってもなんせ長い間他人みたいなもんでしたから」


母が好きだった記憶は思い出した。でも、気持ちも一緒に戻ってくるかといえば、そうでもない。母に会えば戻ってくるかと思ったが、死んだんなら仕方がない。訝しげに見つめる先輩に、少し説明を付け足す。


「母は私にこっちの世界には来てほしくなかったみたいで。私はずっと呪いの見えない一般人として育てられたんです。母は帰ってきませんでしたから、何の仕事をしてるか知ろうとも思えなくて」
「てことは父親は一般人だったのか」
「いえ、父はいませんよ」


そろそろ休憩は終わりだ。立ち上がって伸び。小指には、まだ熱が残っている。

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