愛で満たして ページ6
気がつくと、赤い空間が広がっていた。大きな骨が上空を覆うここは、旦那様の生得領域だ。
しかし、旦那様の姿は見えない。いつもならあの家か、旦那様の姿が見える所に呼ばれるのだが。これは試されているのか?俺の妻なら見つけ出して見せろということか。それなら応えねばなるまい。
取り敢えず、向こうにある影に向かおう。旦那様が骨の山に座っているのを見た事があるので、そこかもしれない。
近づくと案の定骨の山だったが、頂上に人影は見当たらない。しかし、反対に湯気が立っているのを発見した。温泉でもあるのだろうか。向こう側に足を進める。
当たり、温泉だった。湯気が立ち上る中に人影。旦那様だ!
「旦那様!」
後ろ姿に声をかける。水も滴る良い男とはこの事だ。ウッ好き。振り向いた旦那様は四つの目を見開く。え、もしかして旦那様が私を呼んだのではなく私が旦那様を恋しく想うあまり勝手に来ただけだったり?
「……A」
「はい、何でしょう」
旦那様は両手で両手で私の顔を包む。前髪をかき分け、私とおでこをくっつけた。ちう、キスをひとつ。
「暖かいな」
「は、い。旦那様もポカポカですね」
「…丁度良い。脱げ」
「え!?」
ビリッ、まるで服が紙のよう。丸裸にされた私を旦那様は足の間に座らせ、湯船に浸かった。私の腹部をゆっくり撫で、肩に顔を埋めるた旦那様は、暖かいな、なんて呟いた。
「旦那様は私より体温が低いですからね」
「…そうだな。お前がいないと酷く寒い」
ぎゅ、抱きしめる力が強くなる。私は体を旦那様に預けて体温が伝わる面積が大きくなるように身を寄せた。
「あの日、時間が経つにつれ冷えていくお前が恐ろしかった。お前がいないと、何も満たされないというのに。お前は呆気なく死んだ」
それを思い出したのが引き金となってお前を呼んだのだろう。
私は堪らなくなって旦那様を抱きしめる。私も貴方がいないと寒い、満たされない。お互いにそうだったのに、私は長い間貴方を一人にしてしまった。
「暖かいですね」
「そうだな」
「これからもこうやって温まりましょう。ゆっくり湯に浸かって、布団に入って、一緒に眠って」
「それは良いな」
「ええ。この命が尽きて生まれ変わってもこうやって体温を分け合いましょう」
「……そうだな。お前と一緒なら来世も悪くない」
目が合って引き寄せられるように唇をくっつけた。舌を絡めるとお互いの体温で溶けてしまいそう。
貴方以外、何も要らない。
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lala - 宿儺と夢主との愛がもうなんというか美しすぎてほんとに好きです……歪んだ愛そのものを表しているかのよう…そして何より文の作り方がお上手でとても読みやすかったです。更新楽しみにしております。無理はなさらないよう頑張ってください! (2022年1月24日 2時) (レス) @page48 id: d69b352aad (このIDを非表示/違反報告)
ジョリ - 2人の愛とか、夢主ちゃんの思いやりとかで泣きそうになりました。更新楽しみにしています(╹◡╹)無理の無いように頑張って下さい(*´꒳`*) (2022年1月9日 20時) (レス) @page48 id: aa78d32f78 (このIDを非表示/違反報告)
優月(プロフ) - この作品とても大好きです (2022年1月9日 18時) (レス) id: 2ec0497ee9 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 83EPHNUQX3O3FI8さん» コメントありがとうございます。不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ありません。直ぐに修正します。 (2021年12月19日 13時) (レス) @page40 id: 125efbe70f (このIDを非表示/違反報告)
83EPHNUQX3O3FI8(プロフ) - この小説で宿儺の株が上がりました。あと、未亡人って差別用語だと思います。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page48 id: 5b2f0bd76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月17日 16時