恋は盲目、 ページ45
「旦那様!」
更地となった渋谷に、ポツンと貴方様はいた。怪我ひとつなく、貴方様は立っている。なんで、なんで!何故大量の人間を殺したのですか!悠仁は、たとえ貴方様が起こしたことでも絶対なんとも思わないはずがないのに、
「A、逢いたかったぞ」
嬉しそうに、貴方様は笑う。広げられた両腕を見て、私の怒りは四方八方に拡散してしまった。花に群がる蝶のように、私の体は旦那様に吸い込まれる。ああ、貴方様が好きだ。貴方様を思う気持ちに比べれば、悠仁への感情など些細なモノに成り下がる。身勝手とは分かっている、けれどどうしようもない事だった。
「……私、旦那様と生きてたいなあ」
それ先に地獄しかなかろうと、私は貴方様の隣にいたい。全て知らないフリしてそう思っていれば良かったのになんて。でも、今の私には出来っこなかった。そうするには、あまりにも愛を貰いすぎたのだ。
「生きていけば良いだろう。案ずるな、あの時のは急すぎただけだろう。機会などいくらでもある」
「……ええ。旦那様が私を求める度に、限界を知らず高鳴る心臓は嘘ではありません」
「なら」
「…私は貴方様に返しきれないほどのモノを頂きました」
「ああ」
様子のおかしい私を、旦那様は訝しげに見つめる。見当違いな言動を私がする度に、旦那様の眉はよっていく。そして、気づいたのだろう。私がこれから起こす事に。
「私は、貴方様としか生きられない」
「おい」
「けれど。これから貴方様と生きるにはあまりにも……あまりにも、大切な人がいるのです」
「止めろ」
__だから、もう終わりに致しませんか。……要は、一緒に眠って頂きたいのです。この命、尽きるまで。
「止めろ!」
旦那様の叫びごと唇で蓋をした。もうすぐ悠仁が戻ってくる、それまでに伝えておきたかった。
私はただ、貴方様と平穏にいきたいのです。千年前のように誰の邪魔もなく、ひたすらに幸せだけを感じて。けれど、そうするには今はあまりにも邪魔者が多すぎる。
……わがまま?ふふ、諦めてください。そんな女を愛したのは貴方様です。最後まで、骨の髄までたっぷり愛で満たしてくださいね。ずっと一緒にいてくれるって約束したでしょう?
それ以外、いらないから。
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lala - 宿儺と夢主との愛がもうなんというか美しすぎてほんとに好きです……歪んだ愛そのものを表しているかのよう…そして何より文の作り方がお上手でとても読みやすかったです。更新楽しみにしております。無理はなさらないよう頑張ってください! (2022年1月24日 2時) (レス) @page48 id: d69b352aad (このIDを非表示/違反報告)
ジョリ - 2人の愛とか、夢主ちゃんの思いやりとかで泣きそうになりました。更新楽しみにしています(╹◡╹)無理の無いように頑張って下さい(*´꒳`*) (2022年1月9日 20時) (レス) @page48 id: aa78d32f78 (このIDを非表示/違反報告)
優月(プロフ) - この作品とても大好きです (2022年1月9日 18時) (レス) id: 2ec0497ee9 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 83EPHNUQX3O3FI8さん» コメントありがとうございます。不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ありません。直ぐに修正します。 (2021年12月19日 13時) (レス) @page40 id: 125efbe70f (このIDを非表示/違反報告)
83EPHNUQX3O3FI8(プロフ) - この小説で宿儺の株が上がりました。あと、未亡人って差別用語だと思います。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page48 id: 5b2f0bd76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月17日 16時