無知は罪、誰も教えてくれないけれど ページ36
✕月△日
今日からって言っておきながら随分書くのを忘れていた。最初に書いてから一年くらい?三日坊主にも程がある……いと反省。決めた!これは私の中で大事件が起きた時に書く!毎日は書かなくていい!終わり!
□月〇日
【黒く塗りつぶされた跡】さんと出掛けた。胸がいっぱいすぎて何を喋ったか記憶にない。変なこと言ってないかな……。
母の字で綴られた文章は、心中をそのまま書き出されている。どこを捲っても黒く塗りつぶされた跡がついてまわる。多分、人の名前だ。殆どの日に登場しているのに、必ず塗りつぶされており、幸せそうな内容と、所々に残る濡れた跡が歪に感じた。
隣で日記を覗き込む五条は、ピクリとも動かない。いつも浮かべている笑みですら今は消えていた。
△月✕日
もう、泣かない。でも、私が殺した。それだけは忘れるな。
は、息を吐いたのは私か、五条か。多分、どちらともだ。涙の跡は見当たらなかった。さっきまで丸く書かれていた文字は乱雑に歪んでいて、筆圧も濃い。オマケに行をはみ出している。ゴクリ、生唾を飲み込んだ。震える手でページを捲る。五条は、私の髪の毛に触れ、消え入りそうな声で呟いた。
○月△日
腹の中に子どもがいる。ああ、嬉しい。私と、
日向さんの子。
「花野井、日向」
嬉しいと書いておきながら、字は弱々しく震えていて。
「それが、私の父の名ですか」
「……ああ、あぁ、」
ぎゅう、五条の腕が私を包み込んだ。思わず突き返しそうになって、止まる。
「……なんで、」
___そんなに縋るように抱きしめるの。
「ごめん、ごめんね。A」
「は、」
「ごめんなさい、紗南さん」
五条は、私の髪の毛を撫でる。そして、目元をスルりとなぞった。まるで懺悔するかのように、重い声色で
言葉を紡ぐ。
「君の髪色は父親そっくりで、顔立ちも何となく似ているんだ。言われてみればそうかもレベルだけど……似ているんだ」
「はあ、」
「なんで君は呪術界から隠されていたと思う?」
「なんでって、母さんが」
「……君が母親と触れ合えなかった原因を作ったのは僕だよ」
「話が見えませんって、」
五条の様子がおかしい。急になんだ、何の話をしているのか、全く理解出来ない。
「君の、父親は」
___呪詛師だよ、しかも特級レベルのね。
「紗南さんの手で殺された。もう15年くらい前の話さ」
そしてあの頃の僕は、何も知らないクソガキだった。
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lala - 宿儺と夢主との愛がもうなんというか美しすぎてほんとに好きです……歪んだ愛そのものを表しているかのよう…そして何より文の作り方がお上手でとても読みやすかったです。更新楽しみにしております。無理はなさらないよう頑張ってください! (2022年1月24日 2時) (レス) @page48 id: d69b352aad (このIDを非表示/違反報告)
ジョリ - 2人の愛とか、夢主ちゃんの思いやりとかで泣きそうになりました。更新楽しみにしています(╹◡╹)無理の無いように頑張って下さい(*´꒳`*) (2022年1月9日 20時) (レス) @page48 id: aa78d32f78 (このIDを非表示/違反報告)
優月(プロフ) - この作品とても大好きです (2022年1月9日 18時) (レス) id: 2ec0497ee9 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 83EPHNUQX3O3FI8さん» コメントありがとうございます。不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ありません。直ぐに修正します。 (2021年12月19日 13時) (レス) @page40 id: 125efbe70f (このIDを非表示/違反報告)
83EPHNUQX3O3FI8(プロフ) - この小説で宿儺の株が上がりました。あと、未亡人って差別用語だと思います。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page48 id: 5b2f0bd76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月17日 16時