嫉妬しいのは前世から ページ27
ふわり、ふわり。頭が撫でられている。体は暖かいもので包まれていて、決して柔らかくはないのに、心地よい。もっと感じていたくて頭を擦りつければ、頭を撫でていた手は、スルりと私の頬を滑った。
「あまり無理をするな」
「……旦那様?」
上から、旦那様の声が降ってきた。微睡みが一気に覚め、体はワタワタと腕から抜け出そうと動く。しかし、旦那様は私が抜け出そうとしていることを悟ると、頭に添えられていた手は後頭部を掴み、自分の方へ引き寄せる。
ちゅう、一瞬唇が触れたかと思うと、今度はもっと深く、角度を変えて再度重なった。唾液が混ざり合い、唇が離れる頃には抜け出す気力など無くなっていた。
すり、旦那様が私の額と己の額を、頬ずりのように擦り寄せた。前髪がくすぐったい。
「言ったろう、俺が守ると。なんだ、俺ではお前を守るには不足か」
「そんな事は!ありません…ただ、貴方に守られているばかりでは、また、あの日のように、」
貴方を遺して死ぬのではないかと思うと、怖くて堪らないのです。
いつの間にか体は震えていた。旦那様はそれを知ってか、私を温めるように体に抱え込む。
「お前はよくやった。前の世とは見違えるほどに強くなった」
「ですが、」
私は、弱い。唇を噛む。旦那様はそれを親指で制止させると、ゆっくり、もう一度口付けた。
「お前が俺のために強くあろうとすることは理解している。嬉しいとも思う。だが、妻をあらゆる苦痛から守るのは、夫の役目だろう」
赤い瞳と目が合う。
「頼むから、俺にお前を守らせてくれ」
頷くしか出来なかった。熱が心臓の奥底から湧き出て、いっぱいっぱいで、声が咄嗟に出ない。
「ただ、死ななければ。お前が生きてさえいればあとはどうだって構わない。血にまみれるお前を見るのだけは我慢ならんのだ」
「……好きです」
「急になんだ。当たり前のことを」
「えっと、ただ伝えたくて。私は、あなたの為にしか生きられないことを再認識して、」
「それも当たり前のことだ。俺以外の為に生きるなど到底許せることではない」
ああ、幸せってこんなことだ。貴方が私を愛しているだけで、この世の何よりも満たされた気分になる。母では決して埋められない。
「俺が小僧の体を乗っ取った暁には、お前を傷つけた全てのモノをなぶり殺してやろう」
貴方の意識が私以外に向いたら嫌なので、それは結構です、と言ったら、旦那様は可笑しそうに笑った。
「お前は変わらんな」
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lala - 宿儺と夢主との愛がもうなんというか美しすぎてほんとに好きです……歪んだ愛そのものを表しているかのよう…そして何より文の作り方がお上手でとても読みやすかったです。更新楽しみにしております。無理はなさらないよう頑張ってください! (2022年1月24日 2時) (レス) @page48 id: d69b352aad (このIDを非表示/違反報告)
ジョリ - 2人の愛とか、夢主ちゃんの思いやりとかで泣きそうになりました。更新楽しみにしています(╹◡╹)無理の無いように頑張って下さい(*´꒳`*) (2022年1月9日 20時) (レス) @page48 id: aa78d32f78 (このIDを非表示/違反報告)
優月(プロフ) - この作品とても大好きです (2022年1月9日 18時) (レス) id: 2ec0497ee9 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 83EPHNUQX3O3FI8さん» コメントありがとうございます。不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ありません。直ぐに修正します。 (2021年12月19日 13時) (レス) @page40 id: 125efbe70f (このIDを非表示/違反報告)
83EPHNUQX3O3FI8(プロフ) - この小説で宿儺の株が上がりました。あと、未亡人って差別用語だと思います。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page48 id: 5b2f0bd76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月17日 16時