愛の決意 ページ19
東京校は森の中からのスタートだ。そろそろアナウンスがされるだろう。チラリ、悠仁に目を向ける。私は、強くなったと思う。先輩に修行をつけてもらったし、何度か任務も行った。母が教えてくれた事も全て思い出した。
うん、大丈夫。私は守れる。悠仁も旦那様も、自分の身も。そう思ってないと、漠然とした不安で押し潰されそうだ。怖い、君を失うのが、旦那様が側にいないことが、君も旦那様もいない世界で生きていくのが。旦那様の指は何処にあるんだろう。欲しい、手元に一本は。
「そんな顔で見つめんなって」
「……ゴメン、無意識だった」
「俺はそう簡単には死なねーからさ」
ほら、と抱きしめられる。とくとく、心音が鳴る。悠仁のは早い。旦那様のは逆で、とくんとくんと鳴る。同じ体でもこうも違うのか。暖かさも違って、悠仁が夏なら旦那様は春だ。旦那様は体温が私より幾分か低い。でも、あの日だけは随分と熱く感じた。私が死んだ日。私に触れた手は随分と震えていて、でも優しかった。確かに、貴方は私を愛していた。私が死ぬ最後まで、抱きしめてくれた。弱い私を壊さぬように、柔く愛で包んでくれた。弱い、私は弱かった。
ぎゅ、抱きしめ返して悠仁の手を取った。小さく旦那様と呼びかける。パチリ、手の甲に目が開いた。真っ赤な瞳が向けられる。貴方は、瞳の映るのはいつだって私がいい、それを千年以上叶え続けてくれたひと。
「愛してます。だから、私は強くなります」
ちゅ、目元にキスを落とした。どうか見ていてください。もう、反撃の手立てがない人間ではありません。二度と貴方の前で命を散らすことがないよう、貴方の側にずっといれるよう、強くなります。貴方にあんな思いはさせません。
「急にごめんなさい。でも、今伝えねばと思って」
思い出す。あの青目と、貴方との最後。旦那様は、暫く見つめ合ったら、目の代わりに口を出した。
「お前は、俺に守られてれば良い。お前は俺だけの妻だろう、強く成らずとも側にいる権利がある。いや、側にいなければならない。お前に降りかかる全てを、俺が跳ね除けてやろう。その力が俺にはある」
「知ってます。ずっと守って頂きましたから。でも私は、貴方のお荷物になりたくない」
奪われるだけの存在にはなりたくない。
ちゅう、唇を重ねた。私は貴方が好きです。初めて逢った日から、これからもずっと貴方の側で生きる。だから、私は強くならねばならない。二度も、貴方との日々を奪われてなるものか。
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lala - 宿儺と夢主との愛がもうなんというか美しすぎてほんとに好きです……歪んだ愛そのものを表しているかのよう…そして何より文の作り方がお上手でとても読みやすかったです。更新楽しみにしております。無理はなさらないよう頑張ってください! (2022年1月24日 2時) (レス) @page48 id: d69b352aad (このIDを非表示/違反報告)
ジョリ - 2人の愛とか、夢主ちゃんの思いやりとかで泣きそうになりました。更新楽しみにしています(╹◡╹)無理の無いように頑張って下さい(*´꒳`*) (2022年1月9日 20時) (レス) @page48 id: aa78d32f78 (このIDを非表示/違反報告)
優月(プロフ) - この作品とても大好きです (2022年1月9日 18時) (レス) id: 2ec0497ee9 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 83EPHNUQX3O3FI8さん» コメントありがとうございます。不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ありません。直ぐに修正します。 (2021年12月19日 13時) (レス) @page40 id: 125efbe70f (このIDを非表示/違反報告)
83EPHNUQX3O3FI8(プロフ) - この小説で宿儺の株が上がりました。あと、未亡人って差別用語だと思います。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page48 id: 5b2f0bd76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月17日 16時