前世は両面宿儺の妻だった。２【呪術廻戦】

虎杖悠仁の幼馴染（後）【番外編】 ページ12

泣いた日から、Aは変わった。


無気力だった事など嘘のように変わった。ご飯はちゃんと食べるし、居眠りもしない。社交的になったし、身なりに無頓着だったのに、気をつけるようになった。Aは、どんどん綺麗になった。


朝に弱いこと、たまに昔のようなAに戻る事だけが、過去のAを彷彿させた。でも、Aが俺の側を離れることはなかったし、俺も離れなかった。


中学校に上がるとAはモテた。それはもう羨ましくなるくらい。自分磨きに絶対手を抜かないからこその結果なのかもしれない。しかし、誰の告白にも首を縦に振ることはなかった。


「愛してる人がいるの」


ある日、Aが教えてくれた。それはそれは驚いた。俺以外の異性と交流をする事が少ないAが！？固まる俺にクスりと笑ったAは、どこか遠くを見つめた。もう、消えてしまいそうな雰囲気はなかった。ふんわり、甘い香りが鼻をくすぐった。


・


俺とAは幼馴染だ。誰がなんと言おうと、俺たちの関係はそう表される。Aについて知らない事などないに等しい。そう豪語出来るほど、一緒にいた。でも、宿儺を旦那様と呼んだAは、俺の知らないAだった。


あんな瞳に熱を持ったAは知らない。あんな表情のAは知らない。知らない誰かを見ている気がした。Aが遠くに行ってしまった気がした。Aに俺が必要ではなくなった気がして。もう隣にいれない気がして。少し、寂しかった。


・


「死なないでほしい」


そう言われた瞬間、全てがどうでも良くなった。か弱い存在が、俺を望んでいる。涙を流して、宿儺ではない俺に縋っている。信頼も親愛も感情を全て溶かしたような瞳を俺に向けている。宿儺には、向けなかった瞳。俺だけが見れる瞳。


あの日みたいにぎゅっと抱きしめた。いつまでも華奢な体を抱きしめて、同じ朝を迎える。こうすると一つになったみたいだ。朝が来たら二人で起きて、笑い合おう。Aには笑顔が似合うよ。


俺が守るからさ、笑っててよ。愛の感情は宿儺にあげるけど、親愛だけは俺のモノ。前世は知らんが今世は俺が最初にAを見つけたんだ。それくらい、許してくれるだろ？なあ、宿儺。


Aが笑うと、俺も嬉しいよ。


・


いつか、宿儺に言われた。Aには笑顔が似合う？は？バッカじゃねーの？


そんな事、お前に言われるまでもなく十年も前から知ってんだよ！


そう返したら真っ二つにされたの、まだ許してない。

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