虎杖悠仁の幼馴染(中)【番外編】 ページ11
あれから、俺たちは一緒にいるようになった。まあ、俺が勝手にAの世話を焼いているもんだが。アイツも最初は不可解な目を向けていたが、次第に何も言わなくなって俺の側にいるのが当たり前になった。
朝は起こしに行って、一緒にご飯を食べる。眠たそうなAを引っ張って登校。帰り道も勿論一緒。たまにうちに泊まりに来て、一緒の布団で眠る。そして、同じ朝を迎える。
そうしてないと、いつかふらっといなくなってしまう気がした。Aはどこまでも空っぽだった。家に帰っても誰もいない。お手伝いさんが置いていったご飯と暗い部屋がアイツの当たり前だった。誰も、Aを埋めてくれる人がいない。
だから、俺が側にいようと思った。俺がAの穴を埋めて、生きられるようにする。いつかAが選ぶ人が現れるまで、
俺がAの側にいて、ずっと守るよ。
・
「君が虎杖悠仁君?」
ある日、綺麗な人に声をかけられた。突然のことで目をパチクリ。
「あ、えっと怪しい人じゃないから!」
「お姉さん誰?」
「お姉さんって歳でもないよ……Aの母親って言ったらわかる?」
Aの母親。言われてみればどことなくAと似ている。目線を合わせて、お姉さんがしゃがむ。
「君にお願いがあって」
「お願い?」
「うん。これからもAと仲良くして欲しいの。それと、Aを守ってあげて」
もう一度目をパチクリ。何を当たり前のことを。空が青いように、秋の空が高く見えるように、俺にとってはお願いされるまでもなく当たり前のこと。
「うん、それはいいけど……なあ、Aの母さんなんだろ?」
「ええ」
「じゃあ、アイツと一緒にいてやってよ。アイツ、いっつも寂しそうだから」
「………ゴメンね」
悲しそうに目を伏せて、お姉さんはそう呟いた。
「このことはAには言わないで。じゃあね」
「あ、お姉さん!?」
瞬きの間、お姉さんの姿はすぐに見えなくなった。忍者だろうか。ふんわり甘い香りが残っていた。Aからはしない匂い。
・
「A、寂しい?」
一つの布団に二つの膨らみ。くっ付いたら一つになったみたいだ。Aは俺の鼓動を聞くのが好きみたいで、よく俺の胸元に耳を当てる。
「別に」
「本当か?」
「うん。だって、今は悠仁がいるから」
そっか、なんて答えた。微睡から出た言葉。か弱い存在を、俺がこの地に繋いでいる。Aを埋めたのは俺、それが堪らなく嬉しくて、ぎゅっと抱きしめた。
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lala - 宿儺と夢主との愛がもうなんというか美しすぎてほんとに好きです……歪んだ愛そのものを表しているかのよう…そして何より文の作り方がお上手でとても読みやすかったです。更新楽しみにしております。無理はなさらないよう頑張ってください! (2022年1月24日 2時) (レス) @page48 id: d69b352aad (このIDを非表示/違反報告)
ジョリ - 2人の愛とか、夢主ちゃんの思いやりとかで泣きそうになりました。更新楽しみにしています(╹◡╹)無理の無いように頑張って下さい(*´꒳`*) (2022年1月9日 20時) (レス) @page48 id: aa78d32f78 (このIDを非表示/違反報告)
優月(プロフ) - この作品とても大好きです (2022年1月9日 18時) (レス) id: 2ec0497ee9 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 83EPHNUQX3O3FI8さん» コメントありがとうございます。不快な思いをさせてしまっていたら申し訳ありません。直ぐに修正します。 (2021年12月19日 13時) (レス) @page40 id: 125efbe70f (このIDを非表示/違反報告)
83EPHNUQX3O3FI8(プロフ) - この小説で宿儺の株が上がりました。あと、未亡人って差別用語だと思います。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page48 id: 5b2f0bd76c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月17日 16時