貴方となら死んでもいいわ。 ページ9
あ、転生した。
幼馴染との下校中、ふと思い出した。急に立ち止まった私に心配の目を向ける幼馴染の瞳は、二つ。前世の記憶はほとんどが旦那様しかいなかったから、目が二つなど当たり前のことでさえも珍しく感じた。
「大丈夫?」
「……うん、大丈夫」
「でも、泣いてるじゃん」
「……大丈夫」
隣には旦那様はいない、その事実が私に重くのしかかる。私は死んだのだ。旦那様を残して。帰る家は無くなったのだ。もう、旦那様がどこにいるかも分かりはしない。
グズグズと突然泣き出した私を幼馴染はあたふたしながらあやしにかかる。
「今日うちにこいよ!爺ちゃんが昨日沢山お菓子買ってきたからさ!山分けしようぜ」
もうお菓子に釣られる精神年齢ではなくなってしまった。一瞬で精神の年齢だけ成長した私は、可愛げのある子どもではないのだ。
「ほら、早く帰ろうぜ!」
返ってこない返事に痺れを切らしたのか、幼馴染は私の手をとって走る。グイグイと引っ張られる腕に従い、私もいつの間にか駆け足で幼馴染について行く。
私たちは『虎杖』と書かれた家に駆け込んだのだった。
その日から私は変わった。
旦那様に会うために過去の文庫を探し回り、いつでも旦那様の隣に立てるように身なりに気をつけた。授業も居眠りすることはなく、無遅刻無欠席が当たり前になった。
あまりの豹変に、クラスでは頭を強く打ちすぎた説と、幼馴染と脳を交換した説が浮上した。いや、悠仁は何も変わってないから後者はありえないだろ。
中学生では週一で告白されるようになり、あまりに私が誰とも付き合わないので未亡人というあだ名をつけられた。いや、旦那様死んでないから。多分。
断言出来ないのが悲しい。だが、旦那様は私との約束は必ず守るから、きっと生きているはず。
ねぇ、旦那様。どこにいらっしゃいますか?逢いたいです。お慕いしております。私以外、愛さないでください。
ねぇ、貴方の瞳に映りたいです。
私は高校生になった。悠仁も同じ高校に通っている。
ある日、悠仁が何処からか箱を拾ってきた。懐かしさを感じるそれは、何故か私の心を捉えて離さない。
オカ研の先輩達が気に入って持っていってしまったが。まぁ、私の旦那様はそんな小さな箱に入るはずがないので、気のせいということにした。
ねぇ、旦那様。何処にいらっしゃいますか?
すぐそこだ。
風にのって誰かが応えた。
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ゆうちゃんンンン(プロフ) - コメント失礼します。この作品を作っていただきありがとうございます。大好きですもし良ければなのですが、前世の記憶が無いバージョン?を作って欲しいなと思っています。自分、悠仁と宿儺推しでして、図々しいと思われるかもしれませんが気が向いたら作ってほしいです (8月2日 13時) (レス) @page50 id: f5df7aa05f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 大好きですぅぅ (2022年1月25日 1時) (レス) @page50 id: 639ef9d5fe (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - タイトルがモロ好みで作品も最高でした!最後の蛇足も良かったです! (2021年6月22日 20時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
西 - たまに出る夢主ちゃんのツッコミっぽい口調がとてもおもしろいです。。ありがとうございます。 (2021年3月29日 2時) (レス) id: a86aefda0e (このIDを非表示/違反報告)
宿儺 - 宿儺マジ神かよ♪素敵 (2021年1月20日 19時) (レス) id: c0f52421e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年12月19日 15時