愛という名の呪いを二人で ページ6
掴まれた顎の痛みが少しマシになる。手が顎から放されたのだ。やっとのことで上半身を起こし、正面から両面宿儺を見つめる。
「一郎さんは八百屋の店主の息子さんです。お嫁さんがいて、子供もいます。そして、私は貴方の為に生きます。何処にも行きませんし、逃げません。私の居場所は貴方の隣なのですから」
呆けたように私を見つめる両面宿儺は、いつまでも動かない。ただ、ぼんやりと私を目で捉え、私が両面宿儺に触れようとも手を跳ね除けることはなかった。
ゆっくり、頭を撫でる。初めて触れた髪の毛は思ったよりも柔らかかった。そのまま流れるように頬に触れる。私より幾分か低い体温を肌で感じる。
「お前は何故俺をそこまで好む」
「貴方だからです」
私は両面宿儺を抱きしめる。肩口に顔を寄せて、言葉を紡いだ。こっそり匂いを嗅ぐことも忘れない。布の残り香よりも本人から嗅ぐ方がいい匂いな気がする。ウッいい匂い。
「私は貴方が好きです。殺されてもいいくらい、ずっと側にいたいくらい」
ぎゅ、身体が抱きしめ返された。潰してしまわぬよう、まるで壊物を扱うように回された腕は私の胸を満たす。
「貴方の瞳に映るのはいつだって私が良いと、わがままなことを常時思ってしまうくらい」
貴方を愛しています。
呪いだ。私が両面宿儺にかける呪い。この身が尽きようとも忘れないでいて欲しい。私が一瞬でもあなたの心にいた事。愛は尽きないこと。
両面宿儺は何も言わない。きっと抱きしめられたのも愛を囁かれたのも初めてなのだろう。それが私を強欲にさせる。私が最初で最後の人になれば良いのに。
貴方を一生縛る愛の鎖になれたら良い。そうすれば、貴方は私以外を見れないのだから。
「映るも何も、俺にこんなことを言うのはお前くらいしかいないだろう」
だから、お前も俺以外を見るな。
ええ、ええ、約束しましょう。どんな世でも貴方だけを愛します。そして、貴方も私だけを愛してくださいね。
ああ、約束だ。
愛は呪いだ。恋は愛に変わり、両面宿儺を永遠に縛った。
けれど、二人は確かな幸福を感じていたのだ。お互いを求め合う、愛し合う夫婦と、なった。
永遠に、呪いは解かれることはない。
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ゆうちゃんンンン(プロフ) - コメント失礼します。この作品を作っていただきありがとうございます。大好きですもし良ければなのですが、前世の記憶が無いバージョン?を作って欲しいなと思っています。自分、悠仁と宿儺推しでして、図々しいと思われるかもしれませんが気が向いたら作ってほしいです (8月2日 13時) (レス) @page50 id: f5df7aa05f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 大好きですぅぅ (2022年1月25日 1時) (レス) @page50 id: 639ef9d5fe (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - タイトルがモロ好みで作品も最高でした!最後の蛇足も良かったです! (2021年6月22日 20時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
西 - たまに出る夢主ちゃんのツッコミっぽい口調がとてもおもしろいです。。ありがとうございます。 (2021年3月29日 2時) (レス) id: a86aefda0e (このIDを非表示/違反報告)
宿儺 - 宿儺マジ神かよ♪素敵 (2021年1月20日 19時) (レス) id: c0f52421e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年12月19日 15時