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心に根付く愛しい妻 ページ42

赤い液体に満たされた空間。ここは宿儺の生得領域、いわば心の中らしい。積み上げられた骨の頂点を陣取る姿は、流石呪いの王。この禍々しさに納得がいく。


ここで虎杖悠仁は宿儺の条件を呑んだ。心底怪しいし何を企んでいるか分からないが、俺は死ぬわけにはいかないからだ。死ぬ瞬間、Aの姿が頭をよぎった。俺が死んだらアイツは一人になってしまう。存外寂しがり屋のくせに人に甘える事が苦手なアイツ。俺に死なないでほしいなんて目に涙を溜めて縋ったAを守らなければならない。


「おい、早く退けよ。条件は呑んだだろ」
「はー、急かされずともすぐに帰してやる」

めんどくさそうにため息を吐いて、宿儺は俺の上から退いた。軽くなった体を起こして辺りをもう一度見回す。さっきは気付かなかったが、何処までも禍々しい雰囲気の空間にポツンと建物が建っているのを発見した。よく見てみると大きな家、そこだけは何にも侵される雰囲気はなく、静かに鎮座している。


「なあ、あれってなんだ」
「あれ?ああ、あの家か。お前が知る事ではない」
「んだとー!?」


うんざりしたようにまたため息を吐いた宿儺は、あの家に目をやった。悠仁を見る目はいつも見下しているのに、あの家を見る目は何処か愛しさを孕んでいた。再度、こっちを見た目はまた見下していたが。


「はぁ。本当にAはどうしてこんな奴を気にかけるのか。心底分からんな」
「はー!?言っとくけどな、Aが今生きてるのは半分俺のおかげだからな!」
「そうかそうか。それについては褒めてやろう」


その言葉に拍子抜け。肩の力が抜けて目を白黒させてしまった。コイツが俺を褒める?


「気持ち悪!?」
「自ら細切れにされたがるとはな」
「じょ、冗談だって」


嘘だけどな。Aにコイツの何処がいいかを何時間聞いても一割も理解出来ない自信がある。俺だったらコイツと結婚する前に逃げ出してるわ。


「宿儺はAの何処が好きなんだ?」
「脈絡が無いぞ」
「いやー、気になってさ。良いじゃん教えてよ。アイツにお前の好きな所を聞いても全部としか答えんし」
「当たり前だろう。アイツが俺の全てを愛している事など聞かんでも分かる」
「チッ惚気やがって」


やっぱり。宿儺はAの事になると目の中に愛しさを孕む。と、いうことはあのでかい家もAに関係する事なんだろう。分かりやすい事で。


「……そうだな。強いていえば」


全部だ。


スパッ切られた。アイツいつか殴る。

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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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ゆうちゃんンンン(プロフ) - コメント失礼します。この作品を作っていただきありがとうございます。大好きですもし良ければなのですが、前世の記憶が無いバージョン?を作って欲しいなと思っています。自分、悠仁と宿儺推しでして、図々しいと思われるかもしれませんが気が向いたら作ってほしいです (8月2日 13時) (レス) @page50 id: f5df7aa05f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 大好きですぅぅ (2022年1月25日 1時) (レス) @page50 id: 639ef9d5fe (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - タイトルがモロ好みで作品も最高でした!最後の蛇足も良かったです! (2021年6月22日 20時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
西 - たまに出る夢主ちゃんのツッコミっぽい口調がとてもおもしろいです。。ありがとうございます。 (2021年3月29日 2時) (レス) id: a86aefda0e (このIDを非表示/違反報告)
宿儺 - 宿儺マジ神かよ♪素敵 (2021年1月20日 19時) (レス) id: c0f52421e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年12月19日 15時

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