君の行先がどうか幸福で溢れてますように。 ページ19
「A、本当に一人で大丈夫か?俺がいなくても毎日三食食べて朝は一人で起きるんだぞ」
「大丈夫だから!起きれるし食べるから!」
「でもお前、俺がいないと何にも食わねーし起きなかったじゃん」
「何年前の話よ!」
「本当に心配なんだよー。あ、俺毎朝Aに電話かけるからそれで起きてくれ。絶対に忘れないから」
五条の視線がうるさい。なにその生暖かい目は。何にも食わないし起きなかった時代は小学生で終わったから……朝に電話かけてもらうのは頼んでおこうか。
「そんなにAが心配なの?」
「当たり前。コイツ、俺がいなきゃなんにもしない、生きてるのが不思議なくらいの奴なんで」
「へぇ、逆に悠仁が面倒見られてそうな感じなのにね」
……言い返したいが言い返せない。旦那様の記憶を思い出す前、私は本当に人形そっくりな人間だった。自分が生きても死んでもどうでもいいみたいな生き方をしていて、それを見かねた悠仁がなにかと世話を焼いてくれたのだ。それがあって今の私がある。きっと悠仁がいなければ旦那様を思い出す前に栄養失調で死んでただろう。
「今はしっかり生きてるでしょ」
「そーだな。今は生きることに一生懸命になったけど……たまに本当に起きないし食べない日があるじゃん」
「……ゴメンて」
なんとなく謝る。悠仁のは多くの迷惑と心配をおかけしました。以後、気をつけて生きます。多分。
「……まぁ、女子寮にも二年生はいるから困ったら頼んなさい」
「はぁい」
「それじゃあ、Aは僕と来てもらおうか」
五条が私の手を取る。顔を顰めそうになったが、ああ、と思い至った。私を逃さないためか。これから私と旦那様について吐かされる。拘束しなくとも逃げも隠れもしないのに。旦那様に逢えるならどんな拷問でも耐えてみせる。出来れば旦那様には綺麗な私しか見られたくないのだけど。
「ねぇ、それ俺も付いていっちゃダメ?」
「ダメということはないと思うよ。だって悠仁、宿儺の器だし」
「じゃあ、俺もAと行くよ。良いでしょ?A、五条先生」
「良いよ!」
繋がれてない片方の手が悠仁の手によって塞がれる。捕まった宇宙人の気分だ。
「俺さ、今までAが俺にどんなことを隠してたかなんて知らないけどさ、どんな事でも俺はAの味方だから」
悠仁の手は暖かい。きっと私は悠仁以上の善人ともう出会うことはないだろう。だから、その体温を一生忘れないようにぎゅうと握って身勝手な事を祈った。
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ゆうちゃんンンン(プロフ) - コメント失礼します。この作品を作っていただきありがとうございます。大好きですもし良ければなのですが、前世の記憶が無いバージョン?を作って欲しいなと思っています。自分、悠仁と宿儺推しでして、図々しいと思われるかもしれませんが気が向いたら作ってほしいです (8月2日 13時) (レス) @page50 id: f5df7aa05f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 大好きですぅぅ (2022年1月25日 1時) (レス) @page50 id: 639ef9d5fe (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - タイトルがモロ好みで作品も最高でした!最後の蛇足も良かったです! (2021年6月22日 20時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
西 - たまに出る夢主ちゃんのツッコミっぽい口調がとてもおもしろいです。。ありがとうございます。 (2021年3月29日 2時) (レス) id: a86aefda0e (このIDを非表示/違反報告)
宿儺 - 宿儺マジ神かよ♪素敵 (2021年1月20日 19時) (レス) id: c0f52421e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年12月19日 15時