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一目惚れ ページ1

縁談が決まったらしい。


父上から聞かされた話はどこか現実味が欠けているように感じた。早口でことの顛末を並び立てる父は何処か悲しみを孕んでいる。まるで、罪悪感を押し込めるように感じる話から理解できたのは、


私が生贄として選ばれたということだった。


目が二対、腕が四本生えている男がこの都付近の屋敷に住んでいるらしい。そして、夜な夜な人間をなぶり殺していると。嘘か誠かわからぬ事だが、我々を恐怖に陥れることは随分と簡単だった。

誰もが怯え、稀に鬼を倒しに行くぞと勇敢な男が四十以上の軍勢を引き連れ討伐に向かったがその軍勢さえも塵芥のように殺され、死体の山が積み上がっていた。


倒すことが不可能だと人々が悟るや否や今度はその男に取り入ろうと、この都から一人、娘をあの男に嫁がせることになった。


そして、選ばれたのは私。


マジもんの生贄じゃないか。絶対殺されるってわかってんだろ!!


あれよあれよと婚礼準備が行われ、気づいたら男の屋敷の前で立っていた。嫁入り道具を下げ、重いだろう門をゆっくりと開く。一応、声はかけた。何回呼んでも開く気配がしない門に痺れを切らし、こうなったら自分で死地に転がり込んでやるぜと覚悟を決めて、男の屋敷に足を踏み入れた。


ざくり。顔の横に刀が突き刺さった。


耳スレスレに刺さった刀は血で濡れており、禍々しい雰囲気を醸し出している。しかし、私はめげなかった。殺されると覚悟を決めてきたのだから、このくらい予想の範疇。よゆーよゆー。人間、殺されかけると恐怖が一周回って強気に変わるのである。


どうせ殺されるなら私好みの男がいい。


そう思いながら刀が投げられた方向を向いた。


「え、」
「どうした?恐怖で物を考えることも出来ないか?」


ニヤリ。心底愉快そうに目を歪める男は静かに立っていた。まるで怯えて震える様が面白くて堪らないというように此方を見ている。


しかし、私は恐怖で震えているのではなかった。


「好きです。私をそばに置いてください!!!」


自分でも驚くほどの声量が屋敷に響く。溢れ出る、感情。そう、恐怖ではない、甘酸っぱい感情が私の胸を満たした。
この男、両面宿儺の顔がドンピシャにタイプだったのである。


正直言って一目惚れした。


これが両面宿儺、もとい旦那様との馴れ初めである。

貴方しか見えない→



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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ゆうちゃんンンン(プロフ) - コメント失礼します。この作品を作っていただきありがとうございます。大好きですもし良ければなのですが、前世の記憶が無いバージョン?を作って欲しいなと思っています。自分、悠仁と宿儺推しでして、図々しいと思われるかもしれませんが気が向いたら作ってほしいです (8月2日 13時) (レス) @page50 id: f5df7aa05f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 大好きですぅぅ (2022年1月25日 1時) (レス) @page50 id: 639ef9d5fe (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - タイトルがモロ好みで作品も最高でした!最後の蛇足も良かったです! (2021年6月22日 20時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
西 - たまに出る夢主ちゃんのツッコミっぽい口調がとてもおもしろいです。。ありがとうございます。 (2021年3月29日 2時) (レス) id: a86aefda0e (このIDを非表示/違反報告)
宿儺 - 宿儺マジ神かよ♪素敵 (2021年1月20日 19時) (レス) id: c0f52421e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年12月19日 15時

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