検索窓
今日:52 hit、昨日:25 hit、合計:75,330 hit

八十五話 ページ42

宿儺の上から降りて、宿儺の前に座り直すと宿儺も起き上がって私の前へと座った。
一体どうしたのかといった顔つきでこちらを見てくる宿儺はどこか心配した表情で、あぁやはりこの子は優しい子だと私に教えてくれる。


私はそれに甘えるかの様に宿儺に抱き着いた。
宿儺は先程のような拒みを見せず何も言わず抱き締め返してくれた。


『宿儺、宿儺、怨んでくれて構わない憎んでくれて構わない。私のことをどう思おうとお前の自由だ。でも、でもどうかお前を愛することだけはどうか許しておくれ...私のたった一人の愛しい弟...』


呪霊に呪いをかけられ眠りについてからずっと悪夢を見ていた。宿儺に忌み嫌われ、お前に触れることは愚か話すことすら許されなかった。お前にどれだけ謝罪しようとお前は許してはくれなかった。


いや違う。本当ならここが夢で、夢が現実のはずだ。
今この場で宿儺のことを抱きめていることすらおかしなことなのだ。宿儺は私を突き放して軽蔑するだけの資格がある。

なのにこの子はあろう事か私の抱擁を受け入れ更に返してくれてすらいる。あぁなんて優しき子なのだろう。千年前からそうだった。辛い時はいつも傍にいてくれた。


そんな優しい子を私は....





「...姉上、何度言えばいい。己を呪うのはやめろ。その呪いはいつか己の身を滅ぼす」



『でもっでも私はお前をッ...』




もう少しで決壊しそうなほど目には涙が溜まっていた。
弟の前で泣く訳にはいかぬと何とか耐えるが、宿儺の優しい声はどうにもそれを許してくれなさそうだった。




「姉上に裏切られたあの日、自分は人を信じぬと決めた。
けれどやはり姉上だけはどうも遠ざけられない。この俺にこんなに鬱陶しい祝福(呪い)を与えられるのは姉上しかいない。













俺は貴方の愛が心地良い....」





『...ッ宿儺、宿儺ァ』





あぁもう止まらない。止めるすべが私にはわからない。
ボロボロと零れ落ちる涙は一体なんの涙だと言うのだろう。宿儺が私を許してくれた喜びからか、宿儺に窘められようとも己が許せぬ醜さ故か。



泣いて顔を宿儺の首筋にうずめると私の耳飾りがチリンチリンと音を鳴らした。





今だけはこの一時が心の底から安堵できた。
まるで、時が千年前のあの頃に戻ったようであった____

次回作 予告→←八十四話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (253 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
710人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

雪華(プロフ) - 愛実さん» 愛実様 お久しぶりです。まさかまだこの作品を待ち望んで下さる方がいらっしゃるとは...。本当に有難い限りです。本日ようやく完結いたしました!宿儺の姉シリーズはこれからも続きますが、気長に完結をお待ち頂けると幸いです。コメントありがとうございました。 (8月16日 16時) (レス) id: 7ea62759ab (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - めっっちゃ続き待ってました更新ありがとうございます…!!!作者様のペースで、更新頑張ってください!続き楽しみに待ってます😊 (8月12日 0時) (レス) id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
YUKIKA(プロフ) - 続き待ってます (2022年12月15日 12時) (レス) @page24 id: 342256db66 (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - お久しぶりです…。作者様が更新できるときまで待ってます。また更新を再開してくださる日を楽しみにしてます…! (2022年2月23日 19時) (レス) id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
雪華(プロフ) - 棘推しさん» わー!!ほんとだ!1箇所除いて全部間違えてた😂教えていただありがとうございます!!ただいま修正させて頂きました!応援ありがとうございます! (2022年1月21日 22時) (レス) id: b1173b4699 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雪華 | 作成日時:2021年7月22日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。