八十三話 ページ40
目を覚ますとそこは赤い水面の上だった。
目の前には骸骨の積まれた山がそびえ立っており、その頂上で相も変わらず愚弟はそこにいた。
『何の用だい。今回の失態を嘲り笑いに呼び出した訳じゃなかろうな』
「それもあるが、それは二の次だ」
件のことが用でなければなんだと言うのか。正直言って皆目見当もつかない。宿儺から聞くしかないかと宿儺のところまで飛び、宿儺を蹴り飛ばした。
「グッ...いきなり何をする!?」
『愚弟のくせに姉上を見下ろすな。愚弟は愚弟らしく姉上を見上げていろ』
「このっ...!」
油断していたのか存外しっかりと蹴りが入ってしまい宿儺は中々の距離を吹き飛んでいったがそもそもここは愚弟の生得領域。まぁまず問題はないだろう。
吹き飛ばされたとはいえ長い滞空時間のせいで上手く体をひねり地面に着く頃には足でしっかりと着地していた。すぐさま戦闘態勢に入ろうとした宿儺をもう一度蹴り飛ばすが、今回は上手く受け身を取られた。
だがまぁ吹き飛んだことには吹き飛んだ。そして蹴りを何度か食らわせてうつ伏せに倒れさせたところで宿儺の背中に座り込んだ。
『で、結局なんの用なんだ?悪酒飲みすぎて今結構フラフラなんだが』
「ハッ!貴様にしては随分と痴態を晒していたな!滑稽だったぞ!」
この状況でもまだ煽ってくる宿儺にお灸を据えるべく足で横腹を蹴りつければ少し咳き込みこちらを睨みつけてきた。
しかしまぁ今更宿儺に睨まれようと怖くもないのでさっさと要件を述べよと私も睨み返す。
「...なぜ人を庇った」
『....?あぁ、楓のことか』
一体なんの事かと一瞬思考を巡らせるが案外すぐに思いついた。大方虎杖くん達に事の詳細を聞いたのだろう。
まぁ自覚はしているが自分は他人を庇うような性分ではないしな、それが気になったのか。
「名前呼びとは随分と親しそうだな?ケヒッ男か?」
『楓で男は珍しいだろ...。女だよ、別に親しくは無い。ただ彼奴の前世には世話になったからせめてもの礼がしたかっただけだ』
「前世だと?」
たった数週間。最早千年も生きている私には刹那の時ではあったが確かに暖かな時間であったことは私の頭の中に残っていた。
『覚えているか?私が人魚の肉を食べた時のことを』
「...忘れぬ訳なかろう。あんな博打を打つ馬鹿なこと」
博打...まぁたしかにな。本物かどうかもわからぬ物へ縋ったのだから博打と言われても仕方があるまい。
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雪華(プロフ) - 愛実さん» 愛実様 お久しぶりです。まさかまだこの作品を待ち望んで下さる方がいらっしゃるとは...。本当に有難い限りです。本日ようやく完結いたしました!宿儺の姉シリーズはこれからも続きますが、気長に完結をお待ち頂けると幸いです。コメントありがとうございました。 (8月16日 16時) (レス) id: 7ea62759ab (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - めっっちゃ続き待ってました更新ありがとうございます…!!!作者様のペースで、更新頑張ってください!続き楽しみに待ってます😊 (8月12日 0時) (レス) id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
YUKIKA(プロフ) - 続き待ってます (2022年12月15日 12時) (レス) @page24 id: 342256db66 (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - お久しぶりです…。作者様が更新できるときまで待ってます。また更新を再開してくださる日を楽しみにしてます…! (2022年2月23日 19時) (レス) id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
雪華(プロフ) - 棘推しさん» わー!!ほんとだ!1箇所除いて全部間違えてた😂教えていただありがとうございます!!ただいま修正させて頂きました!応援ありがとうございます! (2022年1月21日 22時) (レス) id: b1173b4699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪華 | 作成日時:2021年7月22日 15時