本性を見せない宿儺の姉［両面宿儺］

七十四話 ページ31

「これは運がいい」

「どうしたの？」


呪霊たちとトランプゲームを楽しんでいた夏油がスマホを片手にニヤッとしながら上機嫌な声で呟いた。これに興味を示した真人は何事かと夏油に聞いてみる。真人だけでなくその場にいた脹相や漏瑚達も興味を示していた。




「宿儺の姉が呪いにかかった」




夏油の発した言葉はその場にいた全員が信じ難いと思えることであった。当然である。宿儺の姉とは不老不死の力を持つ千年生きてきたあの五条悟にも勝るかもしれない力を秘めている者である。

例え特級であろうとたかが数年かそこいらに生まれた小童であり、宿儺の姉に敵うなど到底有り得ない話だ。
だからこそ夏油の言葉に全員が驚きを隠せずに目を見開いた。


「え？宿儺の姉が？確か虎杖たちの方に行かせないための餌4体じゃなかった？その程度にやられたってこと？」


「いや違う。どうやら補助監督を庇ったらしい」


「へぇ宿儺の姉って呪いの王と違ってお人好しだね」



真人はつい先日、虎杖が己の領域に侵入したことより呪いの王の怒りを買って攻撃を喰らい逃走したことを思い出した。
彼の邪魔が入っていなければあの七三術師は愚か、自ら領域内に入ってきた虎杖悠仁すら仕留められていただろう。


「彼女は元呪術師だ。まだ人を思う心は残っているんだろう」


「ふぅん....」



なぜそんな詳細なことまで知っているのか。そう疑問に思いながらも口に出すことはせず真人は言葉を濁した。




「呪ったとはいえ、その呪霊を持っていたらおそらく宿儺にここがバレる。いくら指の数がまだ数本とはいえ流石に私たちで宿儺を相手にするのは難しいだろう」


「じゃあどうするの？」



「勿体無いが、呪霊は廃病院に置いておく。おそらく数日しか持たないが今のうちにやれることはやっておこう」


「リョーかいっ。


ところでさ、宿儺の姉にかかった呪いってどんなの？」


「あぁ大したことはないよ。気を失わせ呪いが解けるまでの間悪夢を見させ続けるだけの呪いだよ。ただ精神の弱い者は早く解かなきゃ気を狂わすんだけど、流石に彼女に限ってそれはないしね」


「なーんだあんま面白くないね」


「弱いことに変わりは無いが、この呪霊は一つ面白い術を持っていてね。暇だったらついてくるかい？」


「夏油見に行くの？」

「あぁ、せっかくの機会だからね」





そういって笑った夏油の後をついて行く真人は彼の真意を読み取ることはできなかった。

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