ほんとうのこと ページ36
『なんでだいちゃんが泣くの…』
びっくりして少し落ち着きを取り戻したいのちゃんの手が、俺の涙をすくった。
「だって、いのちゃんが泣かないから!泣きたい顔してるのに、泣かないから!」
『…だいちゃんは、優しい人だね。』
リズムよく叩かれる背中に、余計に泣けてきて。
どうして俺があやされてるんだよって恥ずかしくなる。
雨がしとしとと降る中、いのちゃんはポツリと昔話を始めた。
『俺の母さんね、昔女優だったんだよ。』
「え、初めて知った…」
『ずっと秘密にしてたからね。若い時に俺を産んで、その三年後に死 んじゃったんだ。』
「なんで亡くなったの?」
聞けなかったこの事に、今なら触れられる気がして。
いいよと言わんばかりに、彼は儚く微笑んだ。
『自分から、命を絶ったんだ。』
「っ!そんな…」
『俺その時3歳でさ、どうして母さんがそんなことしたのかも分からずじまい。だからその原因を知りたくて、中1の時に母さんのいた事務所に入ったんだよ。』
最初は入りたくてこの世界に来たわけじゃないんだ、と苦笑いするいのちゃん。
背中を叩いていた手を優しく握れば、そっと握り返してくれた。
『前の社長さん凄くいい人で、俺の事情も知ってたから特別扱いしてくれたの。仕事しながら当時母さんと知り合いだった人に片っぱしから話を聞いたら、すぐ原因は分かった。』
「…なん、だったの?」
ゴクリ、と俺の生唾を飲み込む音がする。
『…ストーカー、だったんだ。
全盛期に引退したから、納得のいかない人が沢山いてね。引退発表してからすぐ嫌がらせが始まったの。警察にも相談せず、一人で悩んで、精神病んじゃって。それで、結局…』
言葉が出なかった。
辛かったね、よく頑張ったね、なんて上っ面な言葉掛けられない。
俺の心を表しているかのように、雨脚がどんどん強くなっていった。
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とりてん(プロフ) - (名前)さん» 間違えてパスをつけてしまったので外しました!すいません。 (2018年4月10日 23時) (レス) id: 3eeda2cba1 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 2のパスワード教えてください。 (2018年4月10日 23時) (レス) id: 1240e3c3c3 (このIDを非表示/違反報告)
とりてん(プロフ) - natsuki0808さん» まさか泣いていただけるとは思ってもおらず…達成感でいっぱいです。ありがとうございました! (2018年4月10日 22時) (レス) id: 3eeda2cba1 (このIDを非表示/違反報告)
とりてん(プロフ) - ゆうみさん» そう言っていただけると書く方も楽しくできます!最後まで読んでくださりありがとうございました! (2018年4月10日 22時) (レス) id: 3eeda2cba1 (このIDを非表示/違反報告)
とりてん(プロフ) - 遥華さん» 更新を楽しみに待ってくださりありがとうございました!その言葉がとても嬉しいです。次の作品も楽しみにしてもらえれば幸いです。 (2018年4月10日 22時) (レス) id: 3eeda2cba1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とりてん | 作成日時:2018年3月20日 0時