彼女について ページ2
Aと話すようになって、分かったことがある。
甘いものが好きだということ。
いちごみるくの飴をいつも持ち歩いているということ。
数学が苦手で、英語が得意だということ。
それから地元とか、去年のクラスとか、そういう他愛のない、クラスメイトなら誰でも知っているようなこと。
「七五三掛くん、消しゴム落ちてたよ」
「え、あーごめん!ありがとう」
そしてAは誰に対しても同じ態度で、みんなに親切だ。今の瞬間だけはしめが羨ましい。でも次の瞬間は、また違う誰かのことを羨むことになるだろう。
だから俺に「吉澤くん」と笑いかけるのもみんなと一緒で、俺にだけ特別にしているわけではないのだ。
そして、もう一つ。
「Aー!!あめ持ってるー!?たべたいんだけど!」
教室の端から、馬鹿デカイ声が響いてくる。特徴のある声だということと、何よりその声の主自身目立つ存在だということから誰なのかすぐに分かる。
「森田くん、あるよ。いちごみるくでいい?」
その声の主である森田美勇人は、学年でもトップレベルの男で、長身で、コミュ力もあって、運動も出来れば頭もいい。モテない訳がない。
Aが森田に飴を手渡す。ほら、この瞬間は森田のことが羨ましい。
「ありがとーA!!おれいちごみるくの飴だいすき!」
そう言って森田は徐ろに包み紙を剥がし、中身を口内へ運ぶ。
…俺はもう一つ、Aについて知っていることがある。
「…わたしも、いちごみるく、すきだよ」
Aが森田を、好きだということだ。
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ふうこ(プロフ) - しーくんんんんん (2017年2月24日 9時) (レス) id: c7d5b947cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:オレンジ | 作成日時:2016年8月11日 22時