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・(前半太宰さん視点) ページ34

この言葉を本人が起きている時に云えたら、どんなに楽だろう。
遠回しに伝えても、Aちゃんには届いてくれないのだ。

だが、前なら軽率に云えていた筈の言葉が、Aちゃんに伝えると思うと喉に詰まって出てこない。

確かにAちゃんの云う通り、口説き文句を放つのは慣れている。
くっ付いたり、手を繋いだり、そういう事も含めて。

だがAちゃんを相手にすると、どうも調子を崩されて上手くいかないのだ。

『好き』のような単純明快で真っ直ぐな言葉を伝える事が、こんなにも成し難いのだという事は、きっとAちゃんが居なければ知ることの無かった事実だろう。

好きだと軽々しく云えないのが、もどかしいのが恋だと云うのなら、厄介極まりない話だ。
一番伝えたい人に限って、大事な事を伝えられないのだから。

まぁ、今はまだ上司と大事な後輩という関係に甘んじていよう。
だけど、もし他の人間にAちゃんが奪われそうな時は——

「ふふっ、おやすみ」

私は安心しきっているのだと分かる無防備な寝顔を眺めて、起こさないようにそっと喉にキスを落とす。
喉へのキスの意味は『支配欲』だったか。

自分のものにしたい、誰にも渡したくない、そういう意味としてはピッタリじゃないか。

——安心して眠っているところ悪いけど、Aちゃんからすれば私は警戒するべき存在なのだよ。気付かれていないのは好都合だけど。

「悪いね」

少しの優越感を感じながら、眠った儘起きる気配のないAちゃんを姫抱きにして、探偵社への道を急いだ。

┄┄┄┄(視点戻ります)

街の輝きと相反するように暗い路地裏で、壁を背にじっと息を潜める。
少し顔を出すと、誰かと交渉している夜帳が居た。

その光景が目に映った瞬間、私はこれが夢だと確信する。
何故なら、この光景は太宰さんに川から拾い上げられる前日に見た光景だからだ。

監視カメラのハッキングによって、夜帳の居場所を確認した私は、相手側の計画を知る為に夜帳を逆に追跡する事にしたのだった。

ちなみに中也さんには追跡の事を伝えて、この後に探偵社に戻る心算である事を伝えている。

一先(ひとま)ず中也さんも用事があるとのことで、別行動してから探偵社に戻る前に合流するという約束を結んでからのこの時の状況だった。

それと、勿論だが川に流されて太宰さんに拾われるのは計画の内では無かった。
もう少し警戒しておけば良かったと後悔しているが、それは後の祭りというものである。

・→←・(太宰さん視点)



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風と衣(プロフ) - もなかさん» もなか様ありがとうございます!面白いと言って貰えて今とてもニヤニヤしております(笑)今回のオリジナル展開でも中原さんの活躍が出てきますので、どうぞお待ちください! (2022年9月18日 20時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - 作品拝啓させていただきました!とても面白かったです!私は中原さん推しなので夢主ちゃんとの絡みの話はニヤニヤしちゃいました(笑)更新楽しみにしています (2022年9月18日 17時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年9月7日 0時

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