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・(太宰さん視点) ページ32

「ありがとう、引き上げてくれて」
「あの儘だったら間違いなく君は川の底に居るだろうからね」
「事実だがそれは怖いな」

Aちゃんは少し困ったように眉を下げる。
その表情をちらりと見て、私は今度はAちゃんの隣に転がり、顔を見られないように反対の方向を向いた。

「私も怖いよ」

厄介だ。
大事だと自覚しなければ、もしくは自分の心に嘘をつけたら、失う事が怖くなる事もないのに。
もうそれは出来ないのだ。

「君が傷付くくらいなら、戦わないで欲しい。代わりに私が片付けるから。・・・・・・なんて云っても、君は止めないだろう?」
「そうだな」

予想していた通りの言葉に、内心溜め息をつく。
もしも許してくれるなら、本当に実行に移すというのに。

「だがな。それは、本当に危険な時は助けに来てくれると信じられるから出来る事なんだ」
「・・・・・・思っていたより、信頼してくれているのだね」

私の呟きに、表情は見えないがAちゃんが苦笑した気配がした。
だがその声には何処か清々しささえあり、敦君と同じように、この子もまた少しずつ変わっているのだと感じる。

「少なくとも、前よりずっと信頼してるな。前は、守って貰うのが怖くて強さを求めていた部分が大きかった。私の所為でその人が傷付いたらと思うと、守られる側になりたくなかった。だが、それは独り善がりなんだな」

Aちゃんは、一度そこで言葉を止める。
ひらひらと蝶が目の前を横切っていくのを眺めて、出会った頃と同じように草達を揺らしていく風に吹かれながら、何も云わずに次の言葉を待った。

「人が傷付いて心が痛むのは当然私だけじゃない。今更過ぎるが、私が傷付いて心を痛めてくれる人が、私の事を守ろうとしてくれる人が居るのだと、最近やっと周りを見れた気がしたんだ」
「本当に今更だよ。Aちゃんは君自身が思っているよりもずっと大事にされてる。人たらしの素質すらあるよ、君には」

私としては、これ以上人をたらして欲しくないのだけど。
そんな言葉を心の中で後ろに付け加えながら、再びAちゃんに向き直ると、少し口元を緩めたAちゃんと視線が合った。

「人たらしかは分からないが、大事にされてると自覚した時、素直に嬉しかった」
「だから私が守るだとか、逆に守られるだとか、そんな極端な関係じゃなくて。・・・・・・お互いに守りたいから守って、だけど自分は自分として独立できる。そんな関係を作りたいと思ったな」

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風と衣(プロフ) - もなかさん» もなか様ありがとうございます!面白いと言って貰えて今とてもニヤニヤしております(笑)今回のオリジナル展開でも中原さんの活躍が出てきますので、どうぞお待ちください! (2022年9月18日 20時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - 作品拝啓させていただきました!とても面白かったです!私は中原さん推しなので夢主ちゃんとの絡みの話はニヤニヤしちゃいました(笑)更新楽しみにしています (2022年9月18日 17時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年9月7日 0時

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