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・(太宰さん視点) ページ31

真逆(まさか)、私が川から引き上げる側になろうとは思わなかったけど、溺れ死ぬ前にAちゃんを見つけられて良かった。
私よりも先に死なれる訳にはいかないのだ。

此の(まま)離したら簡単に何処かに行きそうで、更にAちゃんの方に体重をかけて一緒に地面に倒れ込む。
完全に密着してAちゃんの上に乗っかる形になっているのだが、Aちゃんの反応はというと純粋な驚きだけのようだった。

顔が赤くなっては・・・・・・いない。
照れる基準が(たま)にズレているのはどうかと思う。

だがその方が都合が良かったり、案外楽しんでいたりするのも事実。
むしろこの状況が有難いと、遠慮なく抱き締めてやった。

「太宰さん」
「何?」
「その、あり——」

名前を呼ぶ声に顔を上げると、Aちゃんははっとしたように言葉を止めて、私の目の下をそっと拭う。
少し不安そうな瞳に首を傾げていると、Aちゃんから思わぬ言葉が飛び出た。

「何で・・・・・・。泣い、てるんだ・・・・・・?」

あぁ、川の水が流れてきたのかと思いたかった。
認めたくないのに、(まぶた)が熱いことが涙だという事を示している。

「君の所為だ。一週間、たった一週間居ないだけで、こんな物を見せるくらい不安になったのだよ。責任取ってくれ給え」

いつの間に、私にとって此処まで大事な存在になっていたのだろう。
初めは、不思議な子だと少し興味を持っただけなのに、気が付いたらずっと傍に居たいなんてらしくも無い考えが生まれてしまった。

きっかけなど分かりやすいものも無い儘、揶揄いから恋情へと移り変わっていた。
Aちゃんは迷うように片手を彷徨わせていたが、やがてぽんと私の頭に手を乗せて優しく撫で始める。

女の子らしい細い手には努力家らしく結構マメが出来ていて、それすらもAちゃんの性格を表しているようで愛おしい。
初めて会った時は、惚れるなんて夢にも思わなかったのに、自覚してしまったら、もう想いは溢れるだけだった。

「責任を取る、というのは分からないが、取り敢えず・・・・・・落ち着いたか?」
「足りないね」

離さないという意志をこめて服を握ると、Aちゃんは「分かった」と手を止めずに撫で続けてくれる。
そういうところが優しいのだ。
拒絶しないから、受け止めてくれるから、それに甘えてしまう。

この時間が永遠なら良いのに。
空気を読んで時が止まってくれないだろうか。

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風と衣(プロフ) - もなかさん» もなか様ありがとうございます!面白いと言って貰えて今とてもニヤニヤしております(笑)今回のオリジナル展開でも中原さんの活躍が出てきますので、どうぞお待ちください! (2022年9月18日 20時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - 作品拝啓させていただきました!とても面白かったです!私は中原さん推しなので夢主ちゃんとの絡みの話はニヤニヤしちゃいました(笑)更新楽しみにしています (2022年9月18日 17時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年9月7日 0時

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