・(中也さん視点) ページ25
何度も分かりやすい事をしているというのに、何故Aは気付かないのか。
——こっちはAの事を好きな奴が一体何人居んのかと悶々としてンだよ･･････！
勿論今云っても奇行になる為、口には出さなかったが、もしAが他の誰かと両思いになったとしても、上手く笑える自信など無いのだ。
Aの幸せを願うなら、どれだけ胸が痛くとも笑って送り出すと決めていたのに。
Aは前に俺が一目惚れをした可能性は無いと云ったが、他のAの推測が全て当たっている中でそれだけが外れていた。
一目惚れと云って良いのかは分からないが、近いものはあったのだ。
初めて出会った時、夜を其の儘映しこんだような姿に一瞬見惚れた。
長い藍色の髪が暗闇の中で艶やかに流れて、光を放つ琥珀色の瞳は真っ直ぐに突き刺さってくるのに不思議と落ち着く雰囲気を持ち合わせていた。
だが見惚れたなど、そんな事情を仕事に持ち込む訳にはいかない。
だから仕事として全て気にしない振りをして片付けようとした、それだけの事だったのだ。
だが話せば話す程、一挙一動を眺めている程、気にしない振りが出来ない程に好きになってしまった。
予想外の事をやってのけるのが見てて面白くて、
それでいて律儀で真面目で頑張り過ぎるところを見ていると、守ってやりたいと思うのだ。
強くなろうと自分を追い込みすぎて、いつか折れてしまわないように。
知らない処で苦しんで泣いて、無理をしてしまわないように。
Aが抱えているものを取り払う事は出来ない、だから一緒にそれを背負いたいのだ。
膨らんでいく想いにも、Aは全く気付いてないと思うと悲しみさえ覚えるが。
「あぁ、そうだ」
Aが箸を置いて、落ち着かなさそうに視線を彷徨わせる。
その頬は僅かに紅潮していた。
流石にこの状況でも他の男の話が出たのなら、衝動的に何らかの方法でAの口を塞ぐ。
その前に精神的に抉られるが。
「よ、良ければ、此処に居る間、私がご飯を作りたいんだが･･････此処に居させて貰ってる身だし、前の事もやはり『ありがとう』だけじゃ足りなかった」
前の事とは、Aが俺に共犯になってくれと云った時の事だろう。
予想とは良い方向に外れた言葉に、思わず口角が上がった。
これだけで機嫌が良くなるのだから、単純なのだろうか。
「紛らわしいなァ、Aは」
「え？」
「何でもねェよ」
・(前半中也さん視点、後半国木田さん視点)→←・(中也さん視点)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風と衣(プロフ) - もなかさん» もなか様ありがとうございます！面白いと言って貰えて今とてもニヤニヤしております(笑)今回のオリジナル展開でも中原さんの活躍が出てきますので、どうぞお待ちください！ (2022年9月18日 20時) (
レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - 作品拝啓させていただきました！とても面白かったです！私は中原さん推しなので夢主ちゃんとの絡みの話はニヤニヤしちゃいました（笑）更新楽しみにしています (2022年9月18日 17時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風と衣 | 作成日時：2022年9月7日 0時
