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取り敢えず先程の鏡の先の景色を見られているとして、私の居場所を特定されるまでそう長くない。
今のうちに更に離れて完全に撒きたいところだ。

「A?」
「中也さん!?」

視線の先には何故か中也さんが居て、驚きで固まっていると、再び嫌な気配を感じた。
早い。

パンッと発砲音がなり、頭を素早く斜めに傾けると銃弾が掠めていく。
中也さんはその銃弾を異能で受け止めると、訝しげな表情をして口を開いた。

「こりゃどういう事だァ?」
「あ〜、済まない」

『鏡世界』で再び離れようとすると、中也さんが私の腕を掴んだ。

「は!?」

遠慮は居らないと悟ったのか、耳を貫くような音を響かせながら放たれる銃弾を、中也さんが弾きながら私を抱き上げて走る。

そして一度玉が途切れた隙に、重力をギリギリまで軽くすることによって突風のような速さで路地裏を駆け抜けて、再び撒く事が出来た。

「ここまで来りゃ良いだろ」

中也さんは周りを見回すと私を下ろしたが、腕は掴んだ儘離さず、じっと私を見つめる。

「そんで、何でこんな事になってんのか聞かせて貰うぜ?A」
「それは、まぁ、気にしなくて良い」
「答えになってねェよ」

そして掴まれた(まま)の腕を壁に押さえつけられた。
反対側の腕も掴まれて、両腕とも自由を失う。
ぐっと中也さんが顔を近づける為、顔を離そうと頭を引くがこつんと頭が壁に当たった。

「逃がさねェぞ。ちゃんと全部話すまで離してやらねェ。それともずっと此の儘が良いか?・・・・・・俺を頼れよ」

突然中也さんの雰囲気が変わる。
怒っているような表情だったのが、今度は何処か悲しげな雰囲気を纏う。
だが役目を果たせない口は開くことさえ出来ず、無言で中也さんを見つめる事しか出来なかった。

「そこまでの信頼は出来ねェか?」

何も云えずに俯くと、中也さんは溜め息をついて手を離す。
これで良いのだ、これで良い筈なのに。

ひらりと揺れて離れる目の前の黒外套を慌てて掴んで、少しだけ引き寄せると落ち着く香水の匂いに包み込まれた。

「っ」

どうして掴んでしまったのだろう。
今は誰にも近付かないと決めたのに、何故縋ろうとしているのだ。
何故、甘えが出るのだ。

手を離して元来た道とは反対方向に走ろうとすると、手を引かれて中也さんに抱き締められた。

「えっ」
「何処行くんだよ。お前、やっぱ傍に居て欲しいんじゃねェか。安心しろよ、Aを放って離れる訳ねェだろ、綺麗に引っかかりやがって」

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風と衣(プロフ) - もなかさん» もなか様ありがとうございます!面白いと言って貰えて今とてもニヤニヤしております(笑)今回のオリジナル展開でも中原さんの活躍が出てきますので、どうぞお待ちください! (2022年9月18日 20時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - 作品拝啓させていただきました!とても面白かったです!私は中原さん推しなので夢主ちゃんとの絡みの話はニヤニヤしちゃいました(笑)更新楽しみにしています (2022年9月18日 17時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年9月7日 0時

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