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「………」
奥に進むと、一同は“恐らく三人いたであろう”死体を見つけた。
一人は上半身はしっかりと確認できるものの、他の二人は顔も名前も分からないような肉団子にされていた。
水巫はそれを何も思わず、ただじっと見つめていた。
「三人…でいいんだよな」
「惨い…」
釘崎が口元を押さえる。やりきれない様子の虎杖は、唯一綺麗に残っている死体が、先程涙を流して訪ねてきた女性の息子であることを確認した。
「この遺体、持って帰る」
「え」
「あの人の子供だ。顔はそんなにやられてない」
「でもっ」
「遺体もなしで『死にました』じゃ納得できねぇだろ」
死体の前から動かない虎杖の首元を、伏黒がぐっと掴む。
「あと二人の生死を確認しなきゃならん。その遺体は置いてけ」
「振り返れば来た道がなくなってる。後で戻る余裕はねぇだろ」
「『後にしろ』じゃねぇ。『置いてけ』つったんだ。
ただでさえ助ける気のない人間を死体になってまで救う気は俺にはない」
淡々と述べる伏黒に怒った虎杖が、今度は伏黒の首元を引っ張る。
「どういう意味だ」
「悠仁、まだ分からないの?」
そこで意外な人物が口を開いた。
三人が彼女___水巫を見る。
「ここはそもそも悪いことをした人間が送られる場所なんだよ」
「他人に迷惑をかけた人間の集まりなの」
「そんな人間が死んで、それを私たちが助ける義理はあるの?」
無邪気。水巫は、悪意のない様子で言葉を紡ぐ。
しかし釘崎にはそれがかえって恐ろしく見えた。
「生きてるならまだしも、死んでるんだよ。もう動かないの。そんなのを助けて何になるの?」
虎杖が黙る。伏黒はそれに続けた。
「………オマエは大勢の人間を助け、正しい死を導くことに拘ってるな。
だが自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする」
「じゃあなんで、俺は助けたんだよ!!」
虎杖が悲痛な叫びを上げる。伏黒も、流石のそれには黙ってしまった。
「いい加減にしろ!!時と場所をわきま___」
見かねた釘崎が一歩も譲らない虎杖と伏黒に寄ろうとしたが、それは叶わなかった。
彼女の身体は、突如現れた黒い穴へ吸い込まれるようにして消えた。
「釘…崎?」
伏黒が玉犬がいたであろう場所を見る。
しかし、彼の式神は無惨に首だけが壁にめり込んで残されていた。
「虎杖!!水巫!!逃げるぞ、釘崎を捜すのはそれからだ!!」
しかし、既にやつはそこにいた。
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佐藤れい(プロフ) - 林檎さん» 感想ありがとうございます…! とても嬉しいです、まだ明かされていないことも多くてむず痒い点もあると思いますが、それも込みで今後も楽しんでいただけると嬉しいです! これからもよろしくお願いします! (2020年11月28日 10時) (レス) id: 4f8cc240de (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - こんな夢主ちゃん待ってました。すごく面白いです。シリアスが儚い雰囲気の夢主ちゃんにぴったりで素敵です。更新頑張って下さい、応援してます。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: 67c87e380d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤れい | 作成日時:2020年11月22日 18時