「おまえなんかには、こんなのでええよ」 sin △(◇) ページ26
ゆらり、ゆらり、と動くプリーツスカートに惹かれて歩いた路地裏。そこに居たのは、間違いなくあの子やった。
「何してるの」
「……唯華ちゃん」
ぐいっと腕を引かれて、後ろを向いたあの子は目が虚ろで、やっぱりおかしかった。いつものあの子はあたしのことをこんな目で見ない。もっときれいで、ずっとかわいい目で見てた。だからこれは、"変なやつ"のせい。後ろに見える、もやっとした影のせい。
「なんかねぇ、逃げたかった」
「なんで？」
「わかんない、気分転換かな」
「へぇ……」
わかんないのはきっとAの意思じゃないからやで、とは言わないでおいた。あたしが幽霊が視えるタチってことは知らない、知らないならそれでいい。無理に言う必要なんてないって知ってたから、気づかせないように言わんかった。
「ま、今はやめといたほうがええよ。 気分転換ならあたしと一緒に甘いものでも食べよぉ」
「うーん……ま、それでもいっか。 近くのスイーツバイキングでいい？」
「ええなぁ、じゃあAは先に行ってくれん？ あたしは今、ちょっとだけ用事ができたからさぁ」
「うん、わかった」
あの子に気づかれないように肩を叩いた。これはあたしの。おまえらなんかに、渡さない。あたしだけの友達。そう意味を込めて。
後ろから足音が消えて、ようやく目の前を見た。影はもうとっくに人っぽい形を成していて、もやはとっくに消えていた。
「……おまえが、あの子をたぶらかしたんやろ」
つんざくような呻き声がする。認識できないけど、多分怒ってるんやろうなあ。だってあたしも怒っとるもん。おまえと同じ理由でさ。
「残念だけどな、あの子はおまえなんかに渡せないんよ。 もうすでに、あたしがいるからな」
「そういえばバレンタインが近いけど……ま、かわいそうやしくれてやるかぁ」
ぽい、とマシュマロをいっこだけ投げた。さっきまで怒ってた癖に大人しくなりやがってさあ、ほんまにちょろいな。
「それじゃあな、あの子なんかに執着してないで一人静かに過ごしてろよ」
満足したから、路地裏を去った。さぁて、何食べようかな。
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「くれてやるだけ、あたしって優しいやろ」
続く
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翠霞(プロフ) - ちか_chikaさん» hskw、結構この界隈だとゆめしょ少ないですよね……。百合書き手さんが増えることを祈るばかり……。 (2022年1月24日 18時) (
レス) @page24 id: 4f87e04877 (このIDを非表示/違反報告)
ちか_chika(プロフ) - hskwの小説求めてたので助かります…！ (2022年1月24日 18時) (レス) @page24 id: 74ef4105f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翠霞 | 作者ホームページ：https://twitter.com/Sui_Ka_zr
作成日時：2021年10月17日 2時
