▼ ページ3
次の日。
結局その後は通話で他愛もない話と、夏休みの宿題についてと、明後日にでも遊びに行こうって約束をした。
本当に近いうちに居なくなりそうだとわかっていたから。
この日の私達は授業も、部活も、なんにもないけれど、なんとなく二人で話したいからって裏口から密かに学校へ忍び込んだ。
先生達のいる職員室と事務室は通らないようにした。
だから今いるのは誰もいない空き教室。
一瞬だけ覗いた窓の外では一生懸命にグラウンドを走る野球部が見えた。
「あの人達みんな大変そうじゃない？」
「確かに。 運動系って夏休みでも部活あるんでしょ？ 嫌だなぁ」
「私達は文化系超えて帰宅部だもんね」
何気ない話題で花を咲かせる。
まるでいつもの彼女とクラスメイトのように。
違う点があるとしたら彼女の愚痴が聞ける立場にあるという点なのだろう。
「……そういえばさ、」
「なぁに？」
「金曜日のこと、あれ……なに？」
「あぁ、それね……本当の話だよ、私は本当に消えちゃう」
重苦しい雰囲気になると思ったら案外そうでもなく、あっけらかんと言い切ってしまった。
「えー、なんで？」
「んー、家庭の事情？」
「へぇ、そうなんだ」
あぁ、嘘だな。
彼女はこう見えて噓をつく時、少しだけ目に憂いが宿る。
これは友人になってから学んだこと。
きっと彼女は家庭の事情だけでない何かがあるのかもしれない。
その真相は彼女にしか分からないけど。
「で、結局いつ消えちゃうの？」
「うーん……二日後には、もう消えるかな」
「……ぇ」
待ってくれ、いくらなんでも早すぎる。
まだいっぱいやり残したこととかあるでしょ。
「そうだね、それは本当にごめんね」
私にとってあなたは数少ない友達なんだけど、
「大丈夫、美玲ちゃんはきっとこの先友達がたくさん増えるから。」
「私の事を忘れるくらいにはね、」
「だから泣かないで、悲しまないで、」
泣かないでと言われたって、止まっていた思考がどんどん加速して処理を始める。
その度に涙が止まらなくて、存外依存していたんだなと思ってしまう。
今気づきたくはなかったよ、ねぇ。
すすり泣く私を優しく撫でるその温かい手も、二日後には消えてしまうのか。
ねぇ、嘘だと言ってよ。
その瞳を見れば嘘かどうかわかることなんて気づきたくなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翠霞(プロフ) - ちか_chikaさん» hskw、結構この界隈だとゆめしょ少ないですよね……。百合書き手さんが増えることを祈るばかり……。 (2022年1月24日 18時) (
レス) @page24 id: 4f87e04877 (このIDを非表示/違反報告)
ちか_chika(プロフ) - hskwの小説求めてたので助かります…！ (2022年1月24日 18時) (レス) @page24 id: 74ef4105f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞 | 作者ホームページ：https://twitter.com/Sui_Ka_zr
作成日時：2021年10月17日 2時
