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「疲れた……………」
寮の共有スペースにある古いソファに首をもたれかける。天井の蛍光灯の一つも古いようで、ぼうっとしながら眺めていると何度も点滅していた。
重力に負け、風呂に入り上で纏めていた団子が崩れて髪が落ちる。
「(髪切ろうかな…)」
水巫はそう思って髪を一房取ってそれをいじる。
その時、後ろから釘崎が現れた。
あれ以来気まずく思われて、水巫は二人を見かけるたび彼らを避けていた。
だから今日もまた同じように避けようとする。目を逸らして立ち上がり、部屋に戻ろうとすると、釘崎は水巫の手首を掴んだ。
「……………今、いい」
それはきっと了承を得ようとして問いかけられたものだったのだろう。不器用な釘崎のことだ。
けれども、水巫からしたら強制されたもの同然だった。
水巫は、水が滴る髪を再度纏め上げた後、「分かった」と答えた。
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二人は、少し間を空けて高専の中を散歩するように歩く。
夜とはいえ月光がある以上、闇を渡り歩く彼らにとってそこは昼間と変わらなかった。
歩いて十分ほど経って、ようやく釘崎が口を開いた。
「………この間は悪かったわ。でも!」
謝罪をされ、目を真ん丸にして驚く水巫に、釘崎は人差し指を突きつける。
「アンタの友達は虎杖だけじゃないの!私も、伏黒も、アンタの友達なのよ」
水巫が固まる。そして、下を向く。
不審に思った釘崎が覗き込もうとすると、今度は顔を上げて笑い始めた。その瞳からは大粒の涙が溢れていた。
「そっか。友達か。………ありがとう野薔薇」
止まらない涙を、水巫は幼い子供のように掌で拭い続ける。釘崎はぎょっとしたが、すぐに呆れたように苦笑した。
「なんだ、ちゃんと泣けるんじゃん」
釘崎はハンカチをポケットから取り出して、未だ止まらない水巫の涙を拭いてやる。水巫は「ありがとう」と嬉しそうに言った。
「………アンタもいつまでも隠れてないで出てきたら?乙女二人の跡をついてくるなんてストーカーのすることよ」
釘崎が、近くの木に向かって叫ぶ。
するとその後ろから頭をかきながら伏黒が現れた。
「お前が何するか分からねぇからついてきたんだろ」
溜め息混じりにそう言った伏黒に「何ですって!」と釘崎が食いつく。
伏黒はそれを避けながら、真っ直ぐ水巫の目を見て言った。
「…友達ってのは辛い時に頼るんだよ。一人で悩むな」
水巫は嬉しそうににっこり笑って頷いた。
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みぞれ(プロフ) - とても面白いです!この作品はもう更新されないのですか?されるのであれば更新頑張ってください! (2021年9月23日 18時) (レス) @page10 id: 976162990d (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2021年1月4日 0時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
佐藤れい(プロフ) - ソラさん» ソラさん感想ありがとうございます! 執筆してる側としてはそういったお声がいただけるのが何よりも幸せです… 日々精進するつもりですので、これからもよろしくお願いします! (2020年11月29日 1時) (レス) id: 4f8cc240de (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - めっちゃ面白いです!!更新頑張ってください!!応援してます!! (2020年11月28日 20時) (レス) id: 59bc6ae80d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤れい | 作成日時:2020年11月28日 13時