“漆黒の姫”とDEAD APPLE【文豪ストレイドッグス】 (ページ26)

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・続・ページ26

No side_
＿＿＿…

敦｢もう逃がさない！｣

籠のなかで､敦は澁澤に告げる｡振りかぶった拳で澁澤を撃ち抜く｡

｢うおおおおおお！｣

衝撃が拳に伝わり､澁澤が吹き飛ぶ｡
何度でも､何度でも､敦は繰り返し拳を振るい､爪を突き立てる｡

骨が砕け､澁澤の口から血が滲む｡

のたうちまわりながら､澁澤が笑い声をあげた

澁澤｢これだ…これだよ｣

澁澤が距離を詰め､敦の顎を蹴りあげる｡

澁澤｢死して尚感じるこの歓喜…君にも伝わるかい！？｣

澁澤の額にある角のような結晶体かま､強く輝いた｡赤い光りが結晶体から放たれ､光線となって羅生門の檻を破る｡
漆黒の檻から生まれた鮮やかな光は､世界を赤く染め上げる｡

衝撃波が生じ､檻の外にいた芥川と鏡花､Aまでをも圧倒する｡吹き飛ばされないように､地面に掴まっているのが精々だ｡

澁澤｢すべての異能に抗うその輝きを､今一度私に見せてくれ！｣

赤い結晶体が､ふたたび赤く輝く｡
強い強い赤光｡

光を浴びせられ､敦の体がゆっくりとかたちを変えられる｡
虎の力が消えて行く｡
かわりに敦の体かは浮かび上がるのは､青白い結晶体だ｡

澁澤｢さあ！その異能を､私に！＿美しい…これこそ最高の異能力だ｣

敦｢違う！それは異能力じゃない､僕自身だ！｣

敦の手が青白い異能結晶体を掴んだ｡
蒼い光は敦を包み､ふたたび白虎を宿らせる｡
爪が伸び､獣毛に覆われ､虎の力があふれてくる｡体に馴染んだ白虎の力｡敦はそのまま､澁澤の頭を両手でつぶそうとする｡

澁澤の両手が敦を阻み､互いの腕を掴みあった｡

至近距離にある澁澤の顔を､敦は強く睨みつける｡

澁澤｢…今､すべてを理解した｡君がここにいることも､君が私も前に現れた理由も､そして彼(・)の言葉の真意も＿君が…君が､私を救済する天使か＿＿＿…｣

ああ､と声をあげた澁澤の顔の傷が内側から輝いた｡ぼろぼろと澁澤の体が崩れていき､影に呑み込まれる｡美しい容貌も､白い膚も､何もかも消失する｡長く美しい白髪の一筋さえも残らない｡

すべてが光と闇に溶けてしまう｡

敦の手に残ったのは､髑髏だけだ｡虎の爪痕がついた髑髏｡六年も前に死んだ男の､ただの骨に過ぎない｡だが､敦は力を緩めない｡すべての矛盾をかき消すように｡過去を過去に返すように｡敦は髑髏を握り潰す｡二度とこんなことが起きないように｡骨が砕ける｡髑髏が壊れる｡一片も許さず､粉砕される｡

すりつぶされた髑髏がついには光の粒子となった｡燐光が走り､敦の手から蒼い光が生まれる｡