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パチンと指が鳴る音が聞こえて、正気に戻った。小島が心配そうに、私の顔を覗き込んでいる。
「俺のこと、分かる？」
「？ 小島やろ」
「よかったぁ、成功したみたいやな」
成功した？ 何が？
「記憶のSは、記憶ごと抜き取ることができる。お前も、まんまと犠牲になった訳や」
「……もしかして、正門さん？」
「……正門さん、とやらは、あの男？」
「うん、そう」
小島は一瞬、拍子抜けした顔をした。
「……ここ、赤くなってる」
小島が私の首の辺りを指で触れた。わずかに痛みを伴うその場所には、はっきりと分かる赤い痕。間違いない、あのときに付けられたものだ。
「ごめん、守れへんかった。何がお前守るやねん。笑わせんな、って話やんな」
小島は自嘲気味にハハっと笑う。はっきり残る痕を悔しげに見つめて。
「……ちゃんと、守ってくれたよ」
「守れてへん。俺は何も」
「私、正門さんと最後までしてない」
「……え」
あの時のことを思い出す。
私は、甘んじて正門さんを受け入れようとした。しかし、どうしても誰かの顔が、声が頭に浮かんで、釈然としなかった。
そして、無意識のうちに、正門さんを蹴り飛ばしていたのだ。
「だから、正門さんとは、何もしてないんだよ。だからさ、小島……」
ここまで来てようやく、恋という感情を知ったのかもしれない。今までは、まあアリかな、って人と付き合うことしかなかったし、むしろそれが恋なんだと、思っていた。でも、違ったんだ。
こんなに会いたくなるなんて。こんなにそばに居たくなるなんて。
「待って！ それ、俺から言いたい！」
急にソワソワし出したかと思うと、私の口を右手で押さえた。
「……好きやねん、お前のことが。あの日から、ずっと、ずっっと、会いたかった」
小島は再び私を抱きしめる。汗が冷えて、体も冷えていた所だったから、小島の温もりが存分に感じられる。
ふと、肩に感じていた重みが消えた。
目の前には小島の顔があって、瞬く間に、唇が触れた。一度だけの重なりだったが、人生で、一番のキスだった。
「……こじま、すき」
「うん、おれも」
そっと体が離れた。少し名残惜しい。でも、いつ正門さんが追ってくるか分からない。だから今は、彼のためにも逃げないと。
再び腕を引かれて、走り出す。二人で笑いながら走ったことを、きっと、忘れないだろう。
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ぽてと(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！ そう言っていただけて嬉しいです！ 出来る限りペース上げていきますね！ (2020年6月22日 19時) (
レス) id: 697481dbf3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！こちらの物語が好きで更新されるとすぐ見てしまいます(^^)ただ1話ずつの更新なのでお忙しい中申し訳ないのですが、更新を待ってる時に気になってしょうがないので更新数を増やして欲しいです（ ; ; ）無理を言ってしまってすみません…… (2020年6月21日 22時) (レス) id: 1ca1725196 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とあ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/Yoshikosan0313
作成日時：2020年5月30日 18時
