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「……おねえさん」
少しかすれた声で誰かが私を呼んだ。
声の方を見てみると、泣きそうな顔をしている斗亜くんと目が合った。その瞳に輝きは感じられない。光の入らない場所にいるのだから、当然なのかもしれない。でも、それだけが原因ではない気がする。
ふと、誰かの言葉が頭をよぎった。
「俺、可哀想で仕方ないねん」と。
かわいそう。確かにそうかもしれない。その小さな体であっという間に２つの命を奪った犯罪者。しかし、犯行動機にはむしろ同情すら感じる。
じゃあ、理由があれば人を殺しても良いのか。答えは、NOだと思っていたが、果たして本当にNOだったのだろうか。
「ボク、どう生きていけばいいんやろう」
斗亜くんは独り言のように、耳をすまさないと聞こえない程度の声量で言った。でも確かに、私に向けられた言葉だった。
どう返せば良いのだろう。生憎、人生相談ができるほどに褒められた人生は生きていない。
「……ボク、普通に生きてきたつもりやった。普通の家族に、普通の友達と。普通に学校行って、どっか就職して、平凡でも良いから、楽しい暮らしをしたい。そう思ってた。でも……」
斗亜くんは声を詰まらせ、必死に泣くのを堪えている。彼の言葉の続きはほとんど分かる。
ある日、突如普通が崩壊したのだ。あの一家が近くに引っ越してこなければ、この子の普通はもしかしたら、今も、そしてこれからも、続いていたかもしれない。
私たち大人は、この小さな体に、どれほどの苦悩を背負わせてしまっていたのか。私含め、多くの大人が、Sのことなんて何も知らず、能天気に生きてきた。
斗亜くんのような子を救う手立ては、世界のどこにも存在しない。そして、存在しない限り、今回のような悲惨な事件は起こり続ける。
「ごめんね、斗亜くん。私が、私たち大人が、何もしなかったから。私も、Sと向き合っていたようで、そうでもなかったのかもしれない」
ごめんね、を目の前にいる斗亜くん以外にも伝えたい気がした。いつか、傷つけてしまった人がいる。その人に、伝えたい。ごめんねの一言じゃ済まないけれど、ごめんねと言いたい。
「おねえさん、泣いてるん」
斗亜くんは涙を拭いながらそう訊いた。私は手を縛られているから、涙を拭うことができない。右目から溢れた涙が頬をつたい、首筋に流れ着いた。
私は、当然の如く、泣く立場にない。だから、涙を流して切ることに罪悪感すら感じる。
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ぽてと(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！ そう言っていただけて嬉しいです！ 出来る限りペース上げていきますね！ (2020年6月22日 19時) (
レス) id: 697481dbf3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！こちらの物語が好きで更新されるとすぐ見てしまいます(^^)ただ1話ずつの更新なのでお忙しい中申し訳ないのですが、更新を待ってる時に気になってしょうがないので更新数を増やして欲しいです（ ; ; ）無理を言ってしまってすみません…… (2020年6月21日 22時) (レス) id: 1ca1725196 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とあ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/Yoshikosan0313
作成日時：2020年5月30日 18時
