・ ページ22
「……ぜひ」
なぜか名前を知られていた恐怖から、やっと出た言葉がそれだった。
きっとこの人の秘密が知れるんだと思うと、今日の疲れとかは気にならない。
「ふふ。そう言ってくれて嬉しいわぁ〜。じゃあ、行きましょ」
ギターを黒いケースに入れて肩にかけると、いいとこ知ってるんですよ、と言って私の手を引いた。突然な手繋ぎで心臓が飛び跳ねそうだったが、正門さんはなんら動揺するそぶりを見せない。もしかして、慣れてるのかな。
連れてこられたのは、少し人気のない通りにある居酒屋だった。
「プライベートルームお願いします」
店の扉を開けるなりそう言い放った正門さんに対し、店長らしきおばちゃんがニヤニヤと私を見てきた。
「あれま。彼女？」
「そんな感じです」
「え？！ ちょ、違いますよ」
正門さんは一瞬真っ赤な私の顔を見てニヤリと笑う。
からかわれてるんだと気づいて、思わずムカっとしてしまった。
……それにしても、普通の居酒屋っぽいのにプライベートルームがあるなんて。ちょっと高いとこなのかな。
店員さんに案内されて、木製の少し立て付けの悪い扉を開けると、そこは２人で使うにしては随分広い部屋だった。
「では、ごゆっくり」
そう言って店員さんが部屋を出て、部屋には私たち二人だけになった。
「Aちゃん、フットワーク軽いな。僕みたいな見ず知らずの人とすぐ飲みにはいけへんで、普通」
向かい合わせに座るなり、正門さんは不思議そうに私を見た。
確かに、我ながら危険な行動に出ている気がする。
子供の頃、知らない人にはついていっちゃだめ、って言われてきたのにね。
「そうですよね。でも、あなたのことを知りたくなって」
「え？ 何それ告白？」
「はあ？！」
「うわぁ、顔あっか」
満面の笑みで私を指差す正門さん。この人、青少年風な見た目して、中身ちょっとおかしいんじゃないの。
「てか、誘ったの正門さんですよね？ なんか私に話があるんじゃないんですか」
思わず語尾を強めて言うと、正門さんは少し怯んだ。
してやったり！
「いや、別にそう言うワケでもなくて。風の噂で聞いたAちゃんと喋ってみたいなーってだけやねんけど」
「どこから私のこと聞いたんですか」
「誰やと思う？」
まただ。またからかうみたいに笑い出した。
……もう、この人とは付き合ってられない！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 254人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Aぇ!group」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽてと(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！ そう言っていただけて嬉しいです！ 出来る限りペース上げていきますね！ (2020年6月22日 19時) (
レス) id: 697481dbf3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初めまして！こちらの物語が好きで更新されるとすぐ見てしまいます(^^)ただ1話ずつの更新なのでお忙しい中申し訳ないのですが、更新を待ってる時に気になってしょうがないので更新数を増やして欲しいです（ ; ; ）無理を言ってしまってすみません…… (2020年6月21日 22時) (レス) id: 1ca1725196 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とあ | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/Yoshikosan0313
作成日時：2020年5月30日 18時
