好きになっては、いけないのに。 (ページ9)

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勘違いと自惚れと矛盾とページ9

ベンチにでも座ったのか。
そう思いながら恐る恐る目を開けると、…バチッと五条と視線が絡んだ。

それだけでさえ私の心臓はドキンと高鳴ったけど、何となくそのことを悟られたくなかったので負けじと私も見つめ返した。

そのままお互いに見つめあう事数秒。

じわじわと頬が熱くなってくるの気がする。だが、夜風の涼しさで何とか平静を保てた。…まぁ、長くは続かずじまいで。

我慢できなくなって視線を反らしたのは、私。

『な、なんでそんな、と、とりあえずなんなの…』

『…いや? さっきからお前の百面相見てたら楽しくって」

『ひゃ、ひゃく…!? しっ、してないし! でたらめ言うなバーカ!』

「…バカはどっちだか。というかでたらめなんか言ってねーし。お前さっきから赤くなったり急に真顔になったりしてただろ。…あ、今もちょっと赤いし」

『あ、暑いの体が!(いろんな意味で)』

「ふーん…俺の事好きなのかと思った」

『は、はあっ!!?』

…何言ってんのこの人!!?

俺の事好きって……どんだけ自意識過剰なのよ!!

『アホ! バカ! ナルシスト!』

「はあ? 張っ倒されてぇの?」

『うっさい! この冷徹鈍感バカ野郎!』

「…」

…ぐっ、この男…! ここまできても無表情を貫くとは…!
というかいつもの短気な五条はどこ行ったのよ!?

…そんなこんなで、いつまでたってもすまし顔の五条に私はなんとも言えないむずがゆさを感じていた。
というか、なんで私だけこんな思いしなくちゃなんないんだろ…。

『…はぁ…もうやだこの人…』

「…お前さぁ、黙って聞いてればさっきから俺の事ばっかり言ってくるけどよ…――お前だって、とんだバカ野郎じゃねーの」

『はぁ? 喧嘩売ってるなら買うけ、ど…?』

…直後。

五条は私の腕を取り。
…次の瞬間、あまりにも予想外すぎる行動に出た。

それを受けた私は一瞬にして固まった。と同時に頬がみるみる熱を持っていくのが分かった。

そんな私を一瞥した五条はフイ、と明後日の方向を向いてこう言った。

「…お前もさ。勘違いさせるような事言ってんじゃねーよ…」

『う…、え、あ…?』

「…こんな密着してたら、そりゃ俺だって…」

――そこまで言って。

…言葉は最後まで紡がれず、途中で途切れてしまった。

『………。』

さっ、きからなんなのよ、一体…。

…こん、なの。
自惚れてしまう。

…好きになってしまう。