霧の夢うつつ ページ3
名…名前を言えってこと…?…そんなの言ったところで一体何になるというのだろうか。
だけど、今の短い時間でのやりとりで分かった事がある。
今、私の上に馬乗りになっている「それ」は、圧倒的強者だ。
それも現代の呪詛師…いや呪術師と比べてもトップクラスの強さ。
だって、攻撃が全く認識できなかったんだよ? 腐っても特級の私が。一ミリたりとも。
…反抗すればきっと殺られる。
なのでここは素直に名乗っておく事にした。
『…やごころ…夜心、A』
「夜心…?聞いたことがあるな……あぁ分かった。あの「隠れた名門」の家の出かお前」
『…!? なんっ、で…なんでそれを知ってるの…。現代でうちがそういう家系だって知っているのは、せいぜい御三家の一部の人と身内に関係する人だけなのに…』
――――隠れた名門。
それは平安の世で呪術師の才能として花開いた、五条家、禪院家、加茂家の他に、それと同等の呪術センスで発展したもう一つの「裏の名家」のこと。
それが私たち夜心家だ。
「第四の名家」「裏の名家」「隠れた名門」などと様々な名前で呼ばれるが、なぜそのような名前で呼ばれるようになったのか。
それは御三家の栄華があまりにも凄まじく、華々しいものだったため、私たちの名が埋もれてしまったからである。だから、私たち夜心家と御三家の仲はあまりよろしくない。
現代においても、御三家は莫大な影響力と権力を有するのに対して、私たち夜心家は影響力どころか忘れ去られそうだからね。友好関係には亀裂がどんどん広がっていくだけ。
まぁぶっちゃけ私はどうでもいい派だけどね。というか五条と仲良くしてるし。よく喧嘩みたいなことはするけど。
「ふむ、Aと言ったか。お前にはオレの名前を教えておく。オレの名前は霧尤。見ての通り呪詛師だな」
『む…ゆう? 苗字は?』
「苗字は…あえて言わん。まぁその内分かるかもしれないが」
『…意味わかんない…というか…さらった人たちはどこにいるの…』
「ん? あぁあの雑魚どもか。オレの式神で屠った。弱すぎてつまらんものばかりだったからな」
『…神隠しなんかじゃないじゃん…。ただの呪術師殺しじゃん…。これだから無知で任務行くのは嫌なのよ…』
「神隠しだと? 狐か天狗でもいるかと思ったのか? 面白い話だ」
そう言ってクツクツ笑う霧尤。やはり呪詛師だったか。
そんな事よりも…薄々疑問に思うことがある。
なぜ霧尤は私の事を殺さないのか。
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作者名:すば | 作成日時:2022年11月20日 20時