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そしてそこから先は多分、歩かされるんだろうなぁ。私。痛いのに。
普通骨折れてる人の移動手段って車いすだよね?それか松葉杖。
でも残念ながらこの世界にはそんな常識通用しません。いやまず根本的に呪術の世界そのものが非常識なんだけどね。まぁ非常識というかは非日常というか。
当たり前すぎてそんなことも忘れちゃうって感じかな。
『ふぁぁ〜…なんか帰るってなったら眠くなってきちゃった。体は正直だよなぁ』
自分の家とか帰り際の車とかで急に出てくるこの疲労感。さっきまでアドレナリン出すぎて疲れなんて気付かなかったよ。でもなんか生きてるって感じがする。
私たち呪術師はいつ死んでもおかしくないからね。一週間後、一日後、もしかしたら一秒後には死んでいるかもしれない。そんな世界だから。
そんな事を考えているうちに眠気が一気に襲ってきて、それに抗うこともなく私は深い眠りについた。
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五条side
「…さて、と。やりますか」
俺はAが乗っていった車を見送りながら後ろにそびえ立つ山を見上げた。
…なんとなく、嫌な予感はしていた。
比叡山。そこは呪術界においても、一般の人間にとっても「魔窟である」という認識は変わらない。
だから負の感情がたまるたまる。そんでそのエネルギーから生み出される呪霊はとてつもない力を持つようになる。…まずこの山自体、呪力の総量と流れは異質だしな。俺の「眼」を利用しなくてもそれは明らか。
…だから、一人で行かせたくなかったんだ。
というのも決してアイツが弱いからとかそういう話ではなく、ただ…身の丈に合わないのではないのか、と思ったから俺は止めただけ。
俺たちはまだ学生で…認めるのは不服だが子供なのだ。だからこんな得体の知れない任務に行くのはAでなくてもいいのではないか…と思った。
…一応言っておくが、決してそこに何か特別な感情があったからというわけではない。
ただ単に、そう思ったから。それだけだ。
…それに。
「特別な感情、か。…まぁ、俺がある特定の奴を好きになるなんてありえねーけどな」
そう言って一人、自嘲する。
…不幸。
そう、不幸にするから。
俺が好きになった人は…必ず。
そういう運命なのだ。どうしようもない、抗いようのない運命。
…これはそういう「呪い」なのだ。
「…まっ、んなこと考えても仕方ねーな。とりあえずちゃちゃっと始末してきますか」
そう言って俺は走り出した。
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作者名:すば | 作成日時:2022年11月20日 20時