鳴かぬ蛍が身を焦がす【mzmn】 (ページ10)

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10話ページ10

ふざけるな、それが今の感想。
そもそもなんだそのメンツの配信は、俺を入れろ。

「よっしゃ！！！俺の勝ちや！！！」
そう叫ぶなな湖兄さん。本格的にふざけるな。
勝った兄さんの願いはこう。
『今度デートして』

ふざけるな混ぜろ。いや、デートの権利をくれ。
思わず配信を切り1人へそを曲げる。

プラス思考で行くなら、俺もなな湖さんに頼めば3人でゲームができるかもしれない。
マイナス思考で行くなら、なな湖さんはひよさんに惚れているかもしれない。

じゃなきゃネタでもデートなんて誘わない。はず。
兄さんにLINEで一言ずるいと送る。

即返信で引くが内容はもっと引く。
『ひよちゃんまじでかわいいからな、惚れさせたるわ』
振られてしまえ、と咄嗟に考えた言葉だ。炎上してしまえ。晒すぞ。

いいなあ、で終わる感想。さっさと寝てあのカフェに行こうか、愚痴を聞いてもらおうか。

▽

「いらっしゃいませー。あ、この前の。」
にこーと笑いながら近づいてくる店員さんはやはり可愛い。

「浮かない顔してますね、どうかしました？」
店は今日も1人なようで、椅子まで引いてくれた。

そこはキッチンから顔を合わせられる席で、コーヒーを入れつつ話を促された。

「いや…話したいんすけどすごく話しにくい内容で…。」

なんせどう話しても気持ちが悪いのだ。
「少し違うんですけど、気になってる子が仲良い先輩とデートするみたいな…。」
「お兄さん随分乙女ですね？」

笑われてしまった。

「じゃあ次はお兄さんがデートお誘いしましょうよ。先輩の後なんですからその後にいいデートしたら印象ぐっと高まるじゃないですか。」

えらいポジティブな方だ。まじで言ってるのけ？と心の中で問掛ける。なんせ実はその気になる子と話したことすらない。

「女の子には美味しいスイーツ食べさせて一緒にいて楽しいって言っておけば何とかなりますよ。わたしそうですもん。」

ああ、そうかもしれない。じゃあ店員さん俺とどこか行きましょ。

すっかりコーヒーは無くなり、また来てくださいと言われて店を出る。

どうしたものか。