第五十六話 忘れてしまったこと ページ6
「―――――それも役目の一つよ。泣かないで、リッド。あなたは何も悪くないわ」
「・・・」
突如その声はアストリッドの良く知る、鈴の音のような静かな優しい声に代わった
そしてアミエリタの甘くやわらかな香りに包まれる
「アミタ・・・」
「あの子はね、すごく口が悪いの。素直じゃないから本当のことを言わないだけ。すぐに泣いちゃうリッドに怒っちゃって、意地悪をしてしまうの。あの子も私も心配したよ。リッドが壊れちゃうんじゃないかって、とても心配した」
「・・・ごめん、なさい・・・」
優しさに包まれさらに涙があふれる
「泣き虫リッド。私はリッドが大好き。勿論口には出さないけど、あの子もリッドの事は好きよ。だからね、もう無茶はしないでね」
「うん・・・ごめん・・・」
ポンポンと頭を撫でられ気分がようやく落ち着く
「アミタ・・・」
「なぁに？」
涙をぬぐいアミエリタのオレンジ色の瞳を覗き込む
「私は・・・なにを忘れちゃったの？」
「・・・・・・」
アストリッドの質問にアミエリタは悲しそうに静かに目を閉じた
「アミタ？」
「リッドは何も知らなくてもいいの。それが、セイラの願いだから・・・」
「それじゃあ嫌！嫌なの！教えてよ！ユーグスタクトってなに！？私は誰！？なんで私は知らなくてもいいの！？」
「・・・おいで、リッド」
アミエリタに連れられベッドに上がり向き合うように座る
「あなたはだぁれ？」
「わかんないよ・・・もう、なんにもわかんなくなっちゃった・・・なにが正しくて、何が間違っているのか・・・私がしてきたことは、正しかったの？」
「それは私が知ることではないし私が教えていいことでもないわ。だって私はあなたじゃないんだもの。だからね、もう一度聞くわ。あなたはだぁれ？あなただけしか知らない、あなたはだぁれ？」
「えっと・・・私は、アストリッド・・・アストリッド・ユーグスタクト・・・１３代目のユーグスタクト・・・ローレンヌ様をお守りするの」
「うん、そうだね」
「アミタ、教えて！私は、何を忘れたの？なんでママは忘れさせたの？」
第五十七話 秘密は過去に→←第五十五語 もう一人のアミエリタ
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作者名：ストゥアート | 作成日時：2017年6月24日 22時
