第七十一話 厄災の日の御子 ページ21
どうやら異変を感じたのは御子である女性だけのようだ。椅子から立ち上がり両手前に突き出す
「くそっ!今すぐ街の保護ま!!」
瞬間、ドゴンと地面が大きく揺れた
「なんだ!!くっ!!」
揺れが収まると御子は胸を押さえ倒れた。倒れた御子に駆け寄る臣下達。
「御子様!御子様!!」
「医者を呼んで来い!」
「いや・・・、魔術師を・・・遊撃隊を、煉獄部隊を呼べ!すぐに魔力源にっ!?」
瞬間
世界が闇に染まった
しかしそれはわずかな間
闇が消え、そして次に御子の目に飛び込んできたのは荒れ果て燃える室内
いや、室内だけではない
街そのものが炎に包まれ荒れ果てていた
それは一瞬だった
一瞬の闇が長き歴史を持つエルトリアを破壊し燃やしている
「ユーグス、タクト・・・やつめ・・・やりやがったな・・・くそっ。力が暴れている!おい!誰だ!今歌っている女は!黙らせろ!」
「歌?そんなものは聞こえませんが・・・」
臣下達が耳を澄ませてみても歌は聞こえない。聞こえてくるのは街中からの怒声や悲鳴。
しかしアストリッドには聞こえる
頭に直接響くひどく切ない歌が
ひどく悲しい旋律の歌が
(ローレンヌ様の歌・・・なら、今のが、暗黒の厄災・・・)
アストリッドの中にも響くひどく悲しい旋律の歌が、悲しみの中にわずかな怒りと喜びが混じっている
(―――ロ、レーンヌ、様―――)
グニャリと視界が揺らぎ世界が一転した
視界が明瞭になるとそこは荒れ果てた室内ではなかった
いや、正確には荒れていたが立て直され見覚えのある部屋になっていた
部屋の上座の玉座のような椅子にはステファニーによく似た十代後半の少女が座っている。
しかし先ほどの女性とはわずかに顔立ちが違う。女性の前にはアストリッドのよく知る白い髪の女性が立っていた
「記憶通りの姿ね。白い髪、白い肌、紅い瞳に赤いローブ・・・ユーグスタクト。そして暗黒の厄災の元凶」
女性は少し面白そうにつぶやく。そこにはユーグスタクトに対する憎悪などなかった。ただただ面白そうな目を向けている
「こんばんは、御子テオドシア」
「あら、私のことを知っているの?」
「いいえ。あなたの事は知らないわ。でも御子が変わったら知らせが来るの」
「そう。あなたは今の器ではないのね。じゃあ裁きを始めましょう。運命通りに」
「私は裁きを受けに来たわけじゃないわ」
そういうとセイラは手を横に振り魔法陣を展開させる
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作者名:ストゥアート | 作成日時:2017年6月24日 22時