第四話 人間の世界へ ページ5
フードを深く被り使者が開けた重い木の扉をくぐり外に出る。城の外に出た瞬間吹雪がアストリッドの小さな身体に叩きつけようとするが吹雪はアストリッドに触れた瞬間に消え少女の中に取り込まれる。魔力源でもある吹雪が少女を傷つけることはない。慣れたように降り積もった新雪を靴で踏み分け城の外れにあるガゼボに向かう。
「ふぅ・・・城の中に作ればいいのになんで外なのよ・・・」
ガゼボに着くなり出てくるのは文句の言葉。外は吹雪でもそれほど寒くないがガゼボに向かうためだけにわざわざ吹雪の中を歩いくのは正直に言って面倒臭い。
吹き抜けの作りであるガゼボには結界が張っているのか吹雪が入り込むことはない。床に描かれた複雑な魔法陣を一通り眺め異常がないことを確認すると陣の中心に立つ。左手を前に出し静かに目を閉じ、心を落ち着かせる。
「我が身を彼の地へ。開け、いざないの扉」
呪文を唱え魔法陣に魔力を通すとそれは激しく光りだし、光が消えるとそこには赤いローブの少女の姿はなかった
古い建物が軒を連ねる市民街。小高い丘の上にあるこの国の最も重要な施設である城を囲むように街は出来ている。朝は新鮮な野菜や果実、肉や魚が軒先に所狭しと並び朝市では人々の威勢の良い声で賑わっている。そんな人々の間を縫うようにして歩き目的の店で目的の食材を手に入れていく青年がいた。20歳になったばかりのギルバードは人込みを縫うように歩き食材を調達する。
この街で彼を知らない者はいない。
市民街に合わせて着ている服は確かに周りの人々とたいして変わらないが明らかに良質な生地に細かな装飾が施された服は素人目に見ても高級品であると言わせている。しかし本人は自分の服が市民街で浮いていることに気づいていないようだった。
身なりも良く、どこか気品も漂わせている彼は、主婦顔負けの値切り交渉術で安価で質の良い物を購入していく。本人は街に溶け込んでいるつもりだが、しかし着ているものが高級な物だとか、時折垣間見る気品の良さがどこかいい家の出の子息ではないのかと噂になっていた。そんなギルバートため息をつくと近くの出店で揚げパンを一つ購入して人気のない建物と建物の隙間に入り込む。
あまりに狭く暗いその隙間を誰一人として気にしないからこそ選んだ。
これから出会う少女のために
「ったく、いるんだろう?アリス」
「いるよー」
ギルバード以外に誰もいないはずだ。
だが声は聞こえる。
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ストゥアート(プロフ) - 昔少女さん» コメントありがとうございます。更新頻度は遅いですが、楽しんでいただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。 (2017年10月22日 14時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
昔少女 - あなたの生み出す想像の世界を私も漂っています。 (2017年9月17日 15時) (レス) id: f6820b1fd8 (このIDを非表示/違反報告)
ストゥアート(プロフ) - エリザさん» ありがとうございます。今週は期末試験期間なのでほとんど更新ができませんがこれからもよろしくお願いします。 (2016年7月25日 20時) (レス) id: df3bdd8f8f (このIDを非表示/違反報告)
エリザ - 更新まっています(^_^)/~ (2016年7月25日 11時) (レス) id: fa956406d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ストゥアート | 作成日時:2016年7月4日 21時