Street Blues (ページ19)

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「いらっしゃい。
あ、ヤスの彼女の、
確か、Aちゃん？」

オーナーの大倉くんが、
私のこと、覚えててくれた。

「彼女ではないけど・・・」

否定してて、悲しくなる。

章大、大倉くんに彼女って聞かれて、
軽く、うん。って。

彼女のAって。

そう答えてた。

それ聞いた時も。

ほんまはもう章大にときめいてたんやって、
今更、分かる。

「ヤスは？待ち合わせ？」

「ううん。
章大は他の子たちと、
ルミナリエ行ってる」

「え？なんで？」

大倉くんが、びっくりした顔してる。

それから、事情が分かったみたいで、
優しく笑った。

「今日からやねんなあ。
この辺りもすごい人やもん。
今日は何を飲まれますか？」

急に改まって聞いてくる。

おどけた感じに、
心が少し軽くなった。

「この前の。
涙色のカクテル。
すごく美味しかった」

「ありがとお。
けどあれは、
傷心のカクテルやから。
今日は・・・
もっと甘いのを」

大倉くんがカクテルを作ってくれる。

その様子、見てたら、涙があふれた。

今日も傷心のカクテルでいいと思うねん。

それ言うたら、泣きそうやから、

黙っておいた。

「はい、どうぞ」

淡いピンクのカクテル。

グラスが差し出された時。

すごい勢いでドアが開いて・・・

「Aっ・・・」

章大が駆け込んできて・・・

「やっぱり待ち合わせやん」

大倉くんが、にこって笑った。