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私、羽柴 早希の1日は、アラームの音では始まらない。毎朝私を起こしてくれるのは、柘榴が作る朝ご飯の匂いだ。
「…お腹空いた」
そう呟きながらカーテンを開ける。あまりの眩しさに、いつも5秒は目を開けられない。明るさにやっと目が慣れ、そっと目を開ける。何度か瞬きをしてベッドを降りた。
「おはよう」
「ふぁ……おはよ〜」
扉を開けると、より一層美味しそうな香りが。柘榴の作る料理は最高。朝からこんなものを食べられるなんて嬉しい以外の言葉がない。座るとすぐ朝ご飯が置かれる。
「「いただきます!」」
美味しい…。味噌汁をよく味わいながら飲む。朝から本当に私は幸せだなぁ…。なんて思っていると、いつの間にか柘榴がカバンを持っている。
「早希、今日は一寸早く出ないとダメだから、もう行くね」
「分かった。いってらっしゃーい」
ひらひらと手を振って見送り、ご飯に戻る。また、美味しいなぁなんて言っていると、携帯が鳴る。どうしたのかな。柘榴、忘れ物でもしたのかな。
「えっとー……え、えぇ!?」
届いたメールに思わず驚き、持っていた味噌汁をこぼしかける。
「『彼奴がまた仕事をサボった。今日の昼までの仕事がたんまりあるから手伝ってくれ。1時間早く来い』嘘でしょ?私、いつも9時出勤だから……8時。え、あと少ししかない!」
携帯を投げるように置き、ご飯をかき込む。折角柘榴が作ってくれたのに!味わいたかったのに!なんてことを思いながら食べる。
吐きかけたが何とかこらえ、自分の部屋に戻ってクローゼットを開ける。私が仕事をする時の服。それは袴。赤と紺がメインで、動きやすい。
「あの馬鹿上司…」
ぶつぶつ言わないと気が済まない!いろいろと言いながら肩ぐらいまである髪を櫛でとかし、長めの前髪を編み込む。そして、最後に花の髪飾りで止める。よし、完璧!
「荷物は全部社に置いてあるから持っていくものはないし…。よし、行くか」
いつも履いてる靴は、ヒールが低めで茶色のショートブーツ。紐を締め、足が痛くないか軽く足踏みで確認。よし、これも大丈夫。腕時計を見ると、あと5分。
「遅刻確定!」
もういいか、と、焦るのをやめて歩いていく。いつも歩きだしね。あの人に怒られるだろうなぁ。「俺の理想をぶち壊すな!!」なんて言ってさ。
……一応、急ごう。私は歩くのをやめ、小走りで社に向かった。
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作者名:Noir&arena x他1人 | 作者ホームページ:nothing
作成日時:2018年2月4日 20時