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車を全力で走らせて数分。今のところ、早希は『彼岸花』に襲われることなく車を運転していた。しかし、手汗が酷く、震えが止まらない。それでも、アクセルを踏む強さを変えないでいた。
「この角を曲がれば、探偵社…!」
ゴトッ
「来た…!うわぁっ!?」
槍が降ってきた。しかし、幸運なことに位置がずれ、左肩を掠った程度だ。車を左右に振り、何とか落とそうとするも、『彼岸花』が落ちる気配はない。
「なら、これならどうだ!」
槍が抜けた途端、急ブレーキをする。バランスを失った『彼岸花』は車から離れた。咄嗟に早希も車から出る。そして、目の前にある探偵社ビルへと走った。崩れかかった荷物を崩して足止めをし、中に入って階段を駆け上がる。
「誰かいますか!……国木田さん!」
「早希?無事だったか…」
早希は国木田に駆け寄る。腹部から出血しており、顔色が良くない。
「この怪我…まさか、自分の異能力にですか?」
「そうだ。それより、『彼岸花』はどうした。あいつは俺の異能より強いはずだぞ」
「足止めはしましたが、多分意味は無いです…。屋上に行きましょう!こんな廊下じゃ不利です!」
国木田を支えながら屋上へ行く。扉から少し離れたところで国木田と離れ、短刀を構える。国木田の異能分離体、『独歩吟客』がゆっくりと近づいてくる。
「(『彼岸花』はまだ来ていない。国木田さんは怪我をしているから、戦えたとしても全力では戦えない。なら、まずは『独歩吟客』を倒すのが先…)私が相手だ!」
「伏せろ!!」
早希は反射的に伏せた。銃声が響き、弾はいつの間にか追いついていた『彼岸花』に当たる。
「お前はここから離れろ!『彼岸花』と戦うならここは最適の場所とは言えん!」
「けど、そんな怪我で戦えるんですか!?」
「当たり前だ!行け!!」
「……わかりました!」
「持っていけ!予備で持っていたやつだ!一発使ったが、残りは五発ある!俺はこのショットガンを使う!」
「ありがとうございます!」
拳銃を懐にしまい、早希は屋上から建物に入る。『彼岸花』は追いかけるが、廊下はかなり狭い。槍を振り回せず、追いかけるだけだ。
ビルを出て拳銃を取り出し二発。見事に『彼岸花』の手に当たり、槍を落とす。
「広い場所…。……倉庫街なら戦える!」
早希は新たに別の車に乗ってアクセルを踏んだ。『彼岸花』が槍を拾った時には、数十メートル離れていた。
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作者名:Noir&arena x他1人 | 作者ホームページ:nothing
作成日時:2018年2月4日 20時