臆病者と白昼夢 ページ8
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君を見ると必ず隣にいるその男が俺はずっと気に入らなかった。
学級委員の集まりで俺が君とまともに話をするようになった時には君の横には当たり前みたいな顔をしてその男が立っていた。
学年が違うんだから仕方のないことだけど、校内で君に会えることなんてあんまりなくて。
時折り見かけたって君の隣にはいつもその男がいて、委員の集まりでやってきた君の隣にも必ずその男がいた。
俺はいつでも君の正面に座っていたから、正面から君の顔を見るばかりで。
仲良さげに顔を寄せ合って耳元で会話をしたり出来る君の隣に座った松本潤という名前の後輩が、羨ましくて仕方なかった。
「松本って、あの松本？」
「はい、その松本です」
「そっ…か……それで松本の予定知ってたわけね」
「はい。お互いのスケジュールは把握することにしてるんです」
チャラそうな見た目のわりに意外と中身が真面目だった彼らしい。
態度や言葉がぶっきらぼうな彼を女子は遠巻きにしていたけれど、実は気になって見ている女子が多いことに俺はちゃんと気が付いていた。
そしてその彼の目線が、いつでも後輩の横顔に向けられていたことも。
「そうか、君があの松本とね…」
「そんなに意外ですか？」
「いいや、そんなことないと思うよ。お似合いだよ」
あのころからずっとね。
言葉には出さず心の中で付け足した言葉に、あのころと変わらず向かいに座った後輩は嬉しそうに微笑んだ。
その顔を見れば今の君が誰を好きなのかなんて明白で。
こんな場所で実は君が気になっていたんだなんて無意味なことを俺が言うのはやっぱりルール違反に違いない。
「婚約指輪とかもらったの」
「もらいましたよ。今日は古いもの触るので外してきたんです」
「大切にしてんだね」
「ふふ、はい」
嬉しそうに両手を重ねる後輩を正面から見ながら、俺は残りのコーヒーを一気に飲み干した。
「結婚式には呼んでもいいですか」
「ん、いいよ。行けるかどうかはわかんないけど」
「先輩、就活ありますもんね」
「学生結婚は大変だろうけど、まぁ頑張って。結婚式、楽しみにしてるよ」
「はい！先輩もいい人が見つかるといいですね」
「……あぁ、ありがと」
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2019年11月6日 22時
